宇宙

2025.10.24 10:30

スペースX、1トン150億円の月輸送料発表 NASA月着陸計画で契約解除の可能性

(c)SpaceX

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米国が主導するアルテミス計画において、NASAはこれまでに2機の有人月着陸船(HLS:Human Landing System)を選定し、契約を交わしている。スペースXの「スターシップHLS」は2027年と2028年、ブルーオリジンの「ブルームーンMK2」は2030年に月面に着陸し、クルー2名による6.5日間の月面探査をそれぞれ実施する予定だ。10月18日には、その開発状況を報告する公式レポートがNASAのサーバー上に公開された。そこにはスターシップの推進剤貯蔵船「Depot」に関する新情報なども含まれている。

しかし、その2日後、ショーン・ダフィーNASA長官代行がFOXニュースのインタビューに応じ、2027年の「アルテミス3」で使用する着陸船の選定に関して、NASAが方針を転換したことを明らかにした。同ミッションの着陸船としては、2021年にスターシップHLSが選定され、スペースXが29億ドル(4350億円、1ドル150円換算)を獲得している。しかし、スターシップHLSの開発が遅延していることから、他企業を含む競争入札に切り替える意向が示された。ダフィー氏によると、その手続きはすでに開始されているという。

これによって米国は、中国よりも先に月面に到達することを目指す。ただし、大幅に遅延するアルテミス計画が、より複雑な状況に陥る可能性もある。

軌道上の貯蔵船「Depot」

左からスペースXの「スターシップHLS」、ブルーオリジンの「ブルームーンMK2」、アポロ計画の「LM」 (c)NASA
左からスペースXの「スターシップHLS」、ブルーオリジンの「ブルームーンMK2」、アポロ計画の「LM」 (c)NASA

今回公開されたレポートでは、月着陸船「スターシップHLS」の新たなレタリングが公開されるとともに、同機体の与圧区画の全容量が614m3であることが明らかにされた。これはボーイング747-8の全容積(550~600m3、貨物室含む)より広く、ISS(国際宇宙ステーション、916m3)の67%を占める。また、スターシップの一仕様である「Depot」のレタリングも初めて公開された。これは地球周回軌道(低軌道)上に配置される推進剤の貯蔵船(Orbital Propellant Depot)であり、宇宙におけるガソリンスタンドの役割を果たす。

2027年に予定されるアルテミス3では、3種のスターシップが使用される。左から燃料補給機「タンカー」、推進剤貯蔵船「Depot」、月着陸船「ランダー」。ランダーの正式名称は「スターシップHLS」。「Depot」の意匠は今回初めて公開された(c)NASA
2027年に予定されるアルテミス3では、3種のスターシップが使用される。左から燃料補給機「タンカー」、推進剤貯蔵船「Depot」、月着陸船「ランダー」。ランダーの正式名称は「スターシップHLS」。「Depot」の意匠は今回初めて公開された(c)NASA
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編集=安井克至

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