原体験は、ゾウ80頭分の重量という従来機器への疑問
トウは、英キール大学で数学と物理学を学ぶ大学生だった18歳のとき、父親を大腸がんで亡くした。この経験をきっかけに、放射線腫瘍学に関心を持つようになった。その後、2012年に学士号を取得した後、スウェーデンの放射線治療機器メーカーElekta(エレクタ)に入社し、およそ5年間勤務。がん治療において画像診断と放射線治療を組み合わせるプロジェクトのチームリーダーを務めた。その取り組みは、理論的には魅力的なアイデアだったが、実際には扱いづらく、動作も遅かった。「私たちが開発したのは、より大きく、より高価で、より複雑なうえ、1時間あたりに治療できる患者数も少ないものだった。大きくて興味深いものを作ろうという罠にはまってしまっていた」とトウは振り返る。
この経験が、彼に「別の解決策を探したい」という思いを抱かせた。陽子線治療の装置は巨大かつ複雑で、患者は仰向けまたはうつ伏せの姿勢で寝かされ、数百トンもの重量を持つ巨大なガントリー(照射装置)が患者の周囲を回転する。陽子線治療用ガントリーの重量は100〜200トン、炭素イオン治療に使われるものでは600トンにも達する。「つまり、ゾウ80頭分の重さだ。まったく常軌を逸している」とトウは言う。
「立位治療」に強い情熱を持つ、医用物理学と腫瘍学の専門家・連続起業家というマッキーの支援
オーストラリアのシドニー大学の研究者たちは、この問題に対する代替手法の研究を進めており、トウは2017年、これまで訪れたこともなかった同国に渡り、その研究チームに加わった。その後まもなく、同プロジェクトはウィスコンシン大学マディソン校の名誉教授であり、医用物理学と腫瘍学の専門家、そして連続起業家でもあるロック・マッキー(70)の支援を受けて、シドニー大学からスピンアウトした。
「当時は大したものではなかった。せいぜい数件の特許を持っていただけだった」。現在Leoの会長を務めるマッキーはそう語る。だが彼は過去に複数の企業を立ち上げて成功させており、「立位治療には強い情熱を持っていた」と振り返る。
マッキーによれば、かつて医師たちは患者を立たせた状態で治療を行っていた。しかし1970〜80年代にCTスキャナーが導入されると、撮影のために患者を横たえる必要が生じ、その方法は廃れていったという。それでもマッキーは、座った姿勢での治療には臨床的にも経済的にも利点があると確信していた。
患者を座らせ、その椅子をビームの周囲で回転させることで、装置自体をより小型化でき、患者にとってもより快適な治療が可能になる。最近の研究では、座位や立位のまま治療を受ける患者は、臓器の動きが少なく、より精密な照射が可能になることが示されている。
最初の契約、マクラレン・ヘルス・ケアが選んだ導入の決め手
2022年、ミシガン州内に12の病院と外科・画像診断センターのネットワークを持つ医療機関マクラレン・ヘルス・ケアが、Leoにとって最初の契約を結んだ。マクラレンにとって、過去15年にわたる陽子線治療センター設立の試みは悪夢のようなものだったという。提携していた企業が破産し、主要サプライヤーを相手取って訴訟を起こさざるを得なかったと、同施設のグレッグ・レーン最高管理責任者は振り返る。
「ある時、CEOと私が向かい合って座り、『選択肢は2つしかない。残りの資金を全部つぎ込んで何とか完成させるか、それとも5500万ドル(約85億円)を損失処理してプロジェクトを終わらせるかだ』と話した」とレーンは言う。「そしてお互いに顔を見合わせ、『絶対にやり遂げよう』と決めた」。
このセンターはようやく5年前に開業し、現在では大きな成功を収めているとレーンは語る。その成功を受け、マクラレンは再び拡張を検討するようになったが、かつてのような過酷なプロセスは繰り返したくなかった。そこで、マッキーと以前から関係があったチームがLeoの技術を精査し、最終的に同社への出資と共同開発に踏み切った。
「我々にはスタンフォードほどのブランド力はないが、Leoと最初に契約を結んだ」とレーンは言う。現在、施設の建設は完了しており、12月には患者の治療を開始できる見通しだ。
シンプルなアイデアこそが、新たな可能性を広げる
「初期の頃はよく『ただの回転椅子じゃないか』『なぜ誰もこれを思いつかなかったのか』と言われた」とトウは語る。「だが、最もシンプルなアイデアこそが往々にして最良なんだ。根本的な構造を単純化したことで、プラットフォームに新しい機能を加えるための可能性を大きく広げた」。


