トランプ政権が影響力を行使、TikTokは特異な立場に
一方、トランプ政権は2期目に入って以来、多くの企業に影響力を行使しようとしてきたが、TikTokに対する支配はその中でも際立っている。ホワイトハウスは現在、中国共産党の習近平総書記と協議を進め、TikTokの米国事業の一部を売却する交渉を行っている。売却先には、トランプ支持者として知られるラリー・エリソンとラクラン・マードック(FOXコーポレーションCEO)、アラブ首長国連邦の投資会社MGXなど、主に米国拠点の投資家グループが含まれており、最終的な合意には習近平とトランプの双方の承認が必要とされている。本来、米国法の下でTikTokは禁止されているはずだ。現在もアプリが利用可能なのは、トランプが司法省に対し、禁止法を執行しないよう命じる複数の大統領令を出しているためにすぎない。この判断は、トランプが方針を変えればいつでも覆すことができる。
TikTokは1月、禁止法の施行が目前に迫るなか、米国内で一時的にサービスを停止したのちに再開し、1億7000万人の米国ユーザーに対して、アプリの再開を支援したトランプへの感謝と賛辞を伝える通知を一斉に配信した。その直前には、TikTokの周受資CEOがトランプを「われわれのプラットフォームを真に理解している大統領」と称賛していた。周はほかのテック大手のCEOらとともに、1月のトランプの就任式に出席し、大統領支持者向けの祝賀パーティーをスポンサーとして支援していた。
他のテック大手も追随、司法省の圧力でアプリ削除も
トランプ政権の意向に従うハイテク大手はTikTokのみではない。トランプが再選を果たした直後、メタとグーグルはいずれも大統領が提起した根拠の疑わしい訴訟に対し、数千万ドル規模の和解金を支払うことで決着を図った。また司法省の圧力を受け、グーグルとアップルはいずれもICE職員の目撃情報を共有・追跡できるアプリを自社ストアから削除し、メタも同様の目的を持つフェイスブックページを司法省の要請で削除した。
8月初旬にはアップルのティム・クックCEOがトランプに、iPhoneのガラス片を埋め込んだ金塊を贈呈し、同時に「アメリカ製造プログラム(AMP)」の創設を発表した。トランプは以前、アップルが米国向けiPhoneの生産を国内に移さない場合、25%の関税を課すと脅していた。
インドネシアでも発生、政府の要求に応じデータ提供か
TikTokの政府からのデータ開示要請への対応は、最近インドネシアで物議を醸した。8月25日から30日にかけて、同国では警察の暴力や議員への過剰な特権に対する抗議デモが全国的に発生し、市民の一部はTikTokを使って意見を発信し、抗議活動を組織していた。こうした状況のなか、TikTokは「緊張の激化を避けるため」として、30日にインドネシア国内でのライブ配信機能を自発的に数日間停止した。しかし抗議が沈静化したのち、政府は停止措置が実施される前にライブ配信を行っていたユーザーに関するデータの開示をTikTokに要求した。
当初、TikTokは社内ポリシーにより要請されたデータを開示できないと政府に伝えていた。だが、その後政府が同国での事業ライセンスを停止すると、同社の対応は一変した模様だ。
ライセンス停止から数日後、政府はTikTokが要請されたデータを提供したと発表した。ブルームバーグによれば、提出されたデータは「ウェブトラフィックの傾向からオンライン賭博の疑いのある活動まで、あらゆる内容を含んでいた」という(政府側は、データは匿名化されており個人の追跡には使えないと主張している)。その後、政府はTikTokの事業ライセンスを再び有効化した。TikTokはブルームバーグの取材に対し、「インドネシアの法律と規制を尊重し、同国のコミュニティに安全で責任あるプラットフォーム体験を提供することを目指している」とコメントした。


