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2025.10.23 11:15

赤字13億円の聖地「国立競技場」から稼げるスタジアムへ 共創の先にある未来

撮影/松永裕司

「KOKURITSU NEXT」が拓く未来

では、具体的に「MUFGスタジアム」は、どのような未来を見せてくれるのか。そのブループリントとして掲げられたのが「KOKURITSU NEXT」と名付けられたプロジェクトだ。これは「2026年から展開されるあらゆるプロジェクトを束ねる未来に向けた旗印」と定義され、「スポーツ、文化、教育、環境、観光、地域創生など様々な領域を横断する共創施策を展開」するとしている。

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示された展開例は、まさに未来型スタジアムの姿そのものだ。一つは「スタジアムの価値向上」の側面。まずは無味乾燥な国立のホスピタリティ拡充が決定しており、3階部分にスイートルームを48室新設するほか、ピッチレベルにも5室の新規設置が計画されている。

さらにICT等の先端設備の導入や技術開発支援、そしてその実証実験の場としてスタジアムを開放する。例えば、NTTが開発した次世代通信技術IOWN(NTTが開発した光電融合技術を用いる大容量、低遅延、低消費電力を兼ね備えた革新的なネットワーク基盤・情報処理基盤)を用いた新たな観戦体験、AIによる人流解析に基づいた高度なセキュリティやマーケティング、スタートアップ企業が開発した新技術の社会実装など、スマートスタジアムの実現が見込まれる。NTTグループは米インディアナポリスにおいて、これを半ば実装済みだ。

ドコモの前田社長も発表会において「(国立は)ドコモのベニュー戦略においても最重要拠点。ドコモの技術を駆使した未来の共創拠点として、リアルで新たな価値を作り出し、次の時代のスタジアムの価値を打ち出す」と繰り返した。JNSEビジネスデザイン部の田中洋市部長は「IOWNを積極的に活用します。IGアリーナ(愛知)、GLIONアリーナ神戸をIOWNで繋ぎ、国立の5万人だけでなく、他アリーナと合わせ10万人の観客を前に同時にライブを開催するような取り組みを構想しています」と意欲を見せた。これはドコモが描き続けてきたスマートスタジアムの具現化への一歩であり、元社員である私としても大いに期待を寄せるポイントだ。

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9月に開催された世界陸上では、オフィシャルグッズストアに五重の行列が渦巻き、たこ焼きひとつの購入にも長蛇の列が見られるなど、スポーツ観戦として機会損失を生む場面が見られた。こうした課題も、ICTを駆使したモバイルオーダーなどの導入により、速やかに解決されるに違いない。

もう一つは「社会課題の解決」という側面だ。MUFGは「スポーツに関わるすべての人々に向けたライフ&キャリア設計や金融リテラシーを深める機会の提供」を打ち出し、パートナーであることの意義を最も色濃く反映している。「日本の価値である地方創生や文化継承のグローバル発信基地」としての役割も大きい。MUFGのグローバルネットワークを活用し、日本の多様な魅力を世界に発信すると共に、関連するプロジェクトへのファイナンス支援なども期待できる。

このように「KOKURITSU NEXT」は、スタジアムを単なるイベント会場から、新たな産業が生まれ、人材が育ち、社会課題が解決される「共創の拠点」へと昇華させようとする野心的なビジョンなのだ。

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