さらに、どてらい堂さんは次のような意味深いコメントを残している。
「ガチ中華のマーケットとして土壌が育っている一方、レッドオーシャンとなりつつあるように感じました。一方、消費者目線でいうと、池袋は<ガチ中華の聖地>として認識されつつあるものの、出店者自身からはその印象はあまり受けず、あくまで出店しやすいからくらいの認識なのではないかと感じました」
この指摘が鋭いのは、筆者がすでに2年前に書いていたように、池袋ではすでにガチ中華の過当競争が起きていること(生き残り競争が激化 2024年の「ガチ中華」の新しいシーンを予測する)や、ガチ中華オーナーたちが池袋に出店した理由(「ガチ中華」の店が東京・池袋に集中している理由とは)を正しく洞察しているからだ。
彼らの多くは、必ずしも池袋に対する愛着のようなものを持っているとは限らないこと(「神輿は誰が担ぐ」地元の思いは在住外国人に伝わるか? )を、彼は図らずも見抜いている。
最後の(3)の「読者に対するアドバイス」について、どてらい堂さんは「恐れるな。立ち入ればみんなウェルカム。全てのお店を巡ったわけではないものの、勇気を出してお店に入れば楽しいぞ、とシンプルに感じました」という頼もしいコメントをくれた。
一方、小野さんは「海外から来た外国の人たちの生活を想像する視点を持つと、より本来的な楽しみ方になると思いました。料理自体が持つ生活文化との関係もあるし、この街でお店をやる人のこと、彼らの故郷についても考えるきっかけになります。ぜひ本誌でも今回の取材記事をお読みいただき、実際に体感してほしいです」と寄せてくれた。
筆者がこれまで「池袋<ガチ中華>街歩きツアー」を行ってきたのは、いまこの地で何が起きているのか、考えるきっかけをつくってもらいたかったからだ。その思いが2人にまっすぐ届いたと感じられたことがうれしかった。
池袋は、大阪の西成と同様、日々進行する日本の多文化社会のショーケースの1つである。少々押しつけがましい言い方かもしれないが、街歩きを通じて、その「見える化」を行おうとしてきた筆者としては、参加した方々に、ご自身で見たこと、体験したことの社会的な意味を自分なりに考えていただきたいと思っている。
ちなみに、今回の編集者とライターの2人を案内する1週間ほど前、筆者はこのエリアに出店するガチ中華の店をあらかじめ下調べしておいた。その結果は次のようなものだった。
★池袋駅周辺にあるガチ中華関連の店舗数(2025年9月14日現在)
ガチ中華の飲食店 124軒
中国茶やファストフードやスイーツの店 12軒
中華食材店 6軒
中国カラオケ 4軒
最近の傾向として、飲食店だけでなく、中国のファストフードやスイーツ、ドリンクの店が増えていることが1つの特徴だ。それが何を意味しているのかについては、あらためて別の機会に考察したいと思う。


