最近全国各地で「メガソーラー発電所」をめぐって、森林伐採や土砂災害リスク、さらにはパネルからの反射光の影響などにより、発電事業者と近隣住民との間でトラブルになる事例が増えている。加えて、早ければ約20年という寿命を終えた太陽光パネルが、撤去されずに放置される問題も起こりはじめた。
ところが国は、CO2を排出しない太陽光発電を推進する立場をとっているため、発電施設の整備に歯止めをかける法律上の規定がない。こうなると住民たちからメガソーラー発電の反対運動が起こったとしても、発電事業者と住民の間に立たされる自治体は、これまでやきもきしながら手をこまねいているしかなかった。
そんななか神戸市は、2019年7月から太陽光パネルの設置を規制。市独自に条例での制限に踏み切っていた。いまでは太陽光発電を営む事業者からは「全国でいちばん規制が厳しい自治体だ」という声も聞くという。そこで、早くからこのように判断していた神戸市の考え方とその後の実態を深掘りしたい。
いち早く規制を実施した神戸市
国内で太陽光発電が注目され始めたのは、2011年の東日本大震災の際に起きた福島第一原子力発電所事故を踏まえて、当時の民主党政権が再生可能エネルギーの拡大を打ち出してからだ。
翌年の2012年には、経済産業省が「FIT(固定価格買取制度)」を導入。東京電力や関西電力など各地の電力会社に対して、再エネ(再生可能エネルギー)由来の電気を固定価格で買い取るように義務付けた。
その結果、FIT以前には560万kWだった国内の太陽光発電の導入量が、2024年3月には7380万kWと10倍以上に増加。その内訳をみると、10kW未満(パネル面積換算で約100平方メートル未満)の住宅用施設は約15パーセントにとどまり、残りの約85パーセントは10kW以上の規模の大きな発電施設によって占められていた。メガソーラーは一般的に1,000kW以上の発電施設を指すので、後者に含まれる。
太陽光発電を普及させようとした国は、FIT導入時に太陽光発電での採算が確保できる買取価格を設定した。だが、火力発電や原子力発電と比べた上乗せ分は電気代となって利用者に跳ね返る。それをいつまでも国民に負担させるわけにいかず、40円/kWhを超えていた買取価格は徐々に引き下げられ、現在は10円/kWh以下になっている。
さらに言えば、買取価格は20年固定だが、それを過ぎると市場価格での取引となる。となると、2030年代になれば売電収入が激減する発電施設が出てくる。ちょうどパネルの更新時期と重なるのでダブルパンチとなる。こうなってしまうと、太陽光パネルで発電する事業者の採算性が悪化。おのずと施設の維持や管理も杜撰になりがちになっていく。



