人類はこの100年間で、地球上の生命に関して驚くほど詳細な年表を組み立ててきた。それは最終的に4つの主要な時代に区分された。冥王代、太古代(始生代)、原生代、そして現代まで続く顕生代である。この時代区分は、地球の物理的表面、大気、生命そのものの本質まで、地球全体に及ぶ画期的な変化がそこで起こったことを示している。
しかし、微生物研究を手掛ける日本と台湾の5学会が合同で編集・刊行する学術誌Microbes and Environmentsに掲載された新たな研究結果により、初期の地球に存在した生命の実態について、これまで信じられてきた仮説の多くに疑問が投げかけられている。この発見がいかに興味深いものかを理解するには、まず約35億年前まで時間を遡らなければならない。
地球の生命の起源
地球という星について私たちが考えるとき、「青と緑の惑星」以外の姿を思い浮かべるのは難しい。現代に生きる私たちにとって地球とは、森林があり、珊瑚礁があり、山脈が連なり、砂漠が広がり、そのすべてに無数の生物が生息する「母なる大地」に他ならないからだ。しかし、地球の歴史を振り返ると、実はそのどれもが存在しなかった時代のほうがずっと長い。
約45億年前の冥王代には、地球は文字通り地獄のような有様だった。冥王代という名称はギリシャ神話の冥界の神ハデスに由来し、どろどろに溶融して不安定な表面に小惑星が絶え間なく衝突していた当時の地球の状態を的確に表している。地表はマグマで覆われ、大気は有毒ガスに満たされていた。最も注目すべきは、液体の水が存在していなかった点だ。
だが、2020年に学術誌Science Advancesに掲載された研究論文にあるとおり、地球は次第に冷却された。火山活動に伴うガス放出で、二酸化炭素を豊富に含む大気が生まれた。この時点で水蒸気が凝縮し始め、最初の海が形成される条件が整う。これが太古代(始生代、約40億年前~25億年前)と呼ばれる時代の幕開けを告げた。
これまでにわかっている限り、地球に生命が初めて出現したのは、この時代の海の中だった。最古の生命体は原核生物という核を持たない単細胞生物である。現代の細菌とよく似たこれらの微生物は、浅い海や熱水噴出孔、鉱物の豊富な環境で繁栄した。頑強で、資源を巧みに利用し、現代のほとんどの生命体が死に至るような環境でも生き延びることができた。
当時の地球と現在の地球には、1つ大きな違いがあった。それは酸素である。正しくは、酸素がほとんど存在しなかったことだ。



