フランスの画家ユベール・ロベールは1796年、ルーブル美術館を描いた2作品をサロンに出品した。一方は巨大なガラス張りの天井から光が入るグランド・ギャラリーに、絵画や彫像がずらりと並んだ様子を描いたもの。もう一方は、廃墟と化した同じ場所の想像図だ。破壊された彫像が床に散乱し、天井は崩落。柱や壁の上には、木々の葉が覆いかぶさっている。
大きく異なるふたつの作品に共通しているのは、ルーブル美術館が所蔵する巨匠たちの傑作を模写する芸術家が描かれていることだ。
優れた風景画家として知られるロベールは、偉大な作品の模写においても豊富な経験を持っていた。そして、ルーブル美術館のキュレーターの1人として、国が所蔵するコレクションをアーティストたちに公開し、一般の来場者に気を遣うことなく、週に5日はそれぞれのイーゼルを置いたままでギャラリーを利用できるようにしていた。
ロベールがグランド・ギャラリーを描いた2作品で表したのは、ルーブル美術館のような由緒ある国の施設でさえ、「模写」という行為ほどの持続性、あるいは重要性をもたないという考えだ。そして、そうした見方は19世紀を通じて保たれていた。さらに、ルーブル美術館は今も、特定の時間に限ってアーティストたちに模写を認めている。
だが、時代は変化し、ダダイスムやキュビスムなどのムーブメントの影響を受け、独創性を崇拝するようになったモダニストたちは、ほぼ完全に模写を否定した(ピカソは、「優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」という言葉を残している)。
「取り戻す」ための試み?
ポンピドー・センター・メス(ロレーヌ地方にある、パリのポンピドー・センターの分館)では現在、ルーブル美術館と共同で企画した展覧会、「COPYISTS(模写する人たち)」が開催中だ。模写の尊厳の回復、そしてピカソが言うように、模写は前衛的にもなり得ると示すこと、「模写の伝統を取り戻す」ことが狙いだという。
展示されているのは、美術館側が招へいした各国の著名アーティスト数十人が手掛けたものであり、ルーブル美術館が所蔵するいずれかの作品の模写に基づいて新たに制作された作品だ。



