一番速い者になりたい、という強い欲望は常に存在してきた。オリンピックの金メダリストには称賛と賛美が降り注がれる──たとえ、銀メダルになった選手とのタイム差が数分の1秒であっても。
映画『タラデガ・ナイト オーバルの狼』では、主人公のNASCARドライバー、リッキー・ボビーの座右の銘は「1位じゃなきゃビリだ」だ。
ビジネスの世界でも、イノベーションはしばしばレースにたとえられる。その場合のフィニッシュラインは、単に新たなアイデアを形にすることではない。ここには、既存市場を塗り替え、新たな需要を作り出し、競争での優位を維持することも含まれる。起業家やチーム、企業など、このレースに参加するランナーたちは、重要な選択に直面する。それは、「真っ先に動くか、あとから動くか」というものだ。
成功者に即座に追従することで、成功の果実が得られることもある。だが、イノベーションの進展が、真っ先に動く者に有利に働く傾向はますます強まっている。
ここで言う「真っ先に動く者」とは、チャンスの芽を逃さずに迅速に行動する個人や企業のことだ。こうした人や企業は、競争条件を定義し、圧倒的に大きなマインドシェア(特定の企業やブランドが消費者の心の中に占める良いイメージの比率)を獲得し、他の企業が従わざるを得ないエコシステムを確立する、唯一無二の位置を占めることができる。



