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2025.10.22 09:30

米国土安全保障省、OpenAIにChatGPTユーザーの身元開示命令

gguy / Shutterstock.com

潜入チャットで得られた情報により容疑者を特定

もっとも、政府は容疑者の特定にOpenAIのデータを必要とはしなかった。潜入チャットの中で得られた情報から、容疑者が米軍と関係していることを突き止めたためである。容疑者は、健康診断を受けていること、ドイツに7年間住んでいたこと、父親がアフガニスタンで従軍していたことを明かしていた。のちに当局は軍から、容疑者がドイツのラムシュタイン空軍基地で勤務していたこと、さらに国防総省(Department of Defense)での追加の職に応募していたこと(どの部門かは不特定)を把握した。これらの指標を踏まえ、当局は36歳のドリュー・ホエナーが当該サイトの管理者だと主張している。彼は児童性的虐待コンテンツ(Child Sexual Abuse Material:CSAM)の広告を共謀した罪で1件起訴された。彼はまだ罪状認否をしておらず、弁護人は掲載時点でコメント要請に応じていなかった。

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2019年から続く身元特定の試み

米移民税関執行局(U.S. Immigration and Customs Enforcement:ICE)内で、児童搾取、サイバー犯罪、人身売買に焦点を当てる専門チームであるHSIは、2019年以降、この人物の身元特定を試みていた。捜査官らは、同一人物(現時点ではホエナーとされる)が、CSAMを含む15の異なるダークウェブサイトでモデレーターまたは管理者を務め、これらのサイトの累計ユーザー数は少なくとも30万人に上ると見ていた。いずれもTorネットワーク上にあり、ユーザーの通信を暗号化し、複数のサーバーを経由させることで、オンライン上の行動や身元の追跡を困難にしている。

令状は最新のサイト名を明らかにしていないが、サイトはいずれも高度に組織化され、管理者やモデレーターのチームが運営し、サイトへの貢献度が高い利用者にバッジや表彰を与えていた。違法コンテンツには複数のサブカテゴリがあり、その1つはAI専用で、生成AIプログラムによって作成されたCSAMを掲載する目的だった可能性が高い。

OpenAIは捜査当局にスプレッドシートを提供──データの詳細は不明

政府が具体的にどのようなデータを受け取ったのかは不明である。ある文書によれば、捜索は完了し、OpenAIが1本のExcelスプレッドシートを捜査当局に提供したという。詳細は公開されておらず、米国司法省(Department of Justice:DOJ)はコメント要請に応じていない。OpenAIからの情報は、被告の特定を裏付けるために検察側が活用する可能性がある。

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昨年後半の6カ月間に、政府に132件のアカウント情報を提供

プロンプト自体は児童搾取とは無関係だったが、ChatGPTは他の大規模アプリ同様、性犯罪者の標的となり得る。OpenAIのデータによれば、同社は昨年7月から12月の間に、CSAM関連のコンテンツ3万1500件を、すべてのテック企業が児童虐待画像を報告する義務を負う「全米行方不明・被搾取児童センター」(National Center for Missing and Exploited Children:NCMEC)に報告した。同じ6カ月間に、ユーザー情報またはコンテンツの開示要請を71回受け、政府に対して132件のアカウント情報を提供したとしている。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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