──石上さんは来年のヴェネチア・ビエンナーレのサテライトイベントでキュレーターを務めます。
石上:西洋ルネサンス発祥の地で茶室をつくり、東洋のルネサンスを叫ぼうと計画中です。示したいのは、さまざまなものが混ざり合う世界観。西洋は神か人間か、善か悪か、生か死かと世界を分ける二元論ですが、東洋は「善があるから悪があり、悪があるから善がある」と二律背反で世界をとらえます。アートか工芸か、ハイアートかローアートか、さらに文化か産業かという二元論も、そろそろ無効化して更新すべきです。
その際の最適解になるのが茶の湯です。西洋は物事を細かく分けて分析する還元主義ですが、茶の湯はさまざまなものを統合して共存させていく。今回、会場全体のテーマは「個人・コミュニティ・環境の関係性」ですが、茶の湯の思想はフィットしています。
──日本企業の参画も視野に入れているとか。
石上:産業側の人たちはブランドやプロダクトの付加価値を上げる方法を知りたがっています。付加価値をつける枠組みは「文脈化」「権威化」「流行化」の3つ。企業はマーケティングで流行化させる方法は熟知していますが、文脈化や権威化については文化側が長けていて、産業側もそこに興味をもっている。
岩本:産業界に働きかけて、文化を中心に日本の産業が世界と相対する環境をつくりたいですね。たとえば外国人に人気のラーメン、お茶、アニメは異なる産業です。それぞれの顧客が漠然と日本的なものに惹かれているなら、企業間で協力して相互送客、共同教育ができるでしょう。
日本発のブランドは、日本文化から想起される「高品質」「技術」「クラフトマンシップ」のイメージによって支えられています。それと同じように、私たちはこの国に蓄積されてきた「見えない文化」に無意識に依存して、暮らしや経済活動を営んでいます。そのことに気がつけば、一見関係のない産業同士も調和して付加価値を生み出せるはずです。
日本には「日本は災害の多いFragileな国。だからこそ明日を生きられないという前提をもち、日常を愛する文化を創造した」という思想があります。それを整理してあげれば、『シン・ゴジラ』を震災のメタファーとして読み解いた特撮ファンが、次は工芸の金継ぎを愛するかもしれない。そんな可能性すら見出せます。
石上:どう付加価値を上げるかは日本全体で取り組むべき課題。みんながハーモニーの関係性の中にいるという前提に立てれば、全体の底上げが可能になる。そう信じて、事業を仕掛けていきます。
石上 賢◎1992年生まれ。画家の父、画商の母の元に生まれ、アーティストが抱える経済的課題に直面。以来、仕組みを模索し続け、2019年アート・工芸×ブロックチェーンのプラットフォーム「B-OWND」を立ち上げる。丹青社 B-OWNDプロデューサー。
岩本 涼◎1997年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。幼少期に茶道裏千家に入門。岩本宗涼という茶名をもつ。2018年、21歳のときにTeaRoomを創業。茶道裏千家准教授。中川政七商店社外取締役。


