Headwayを正式ローンチ、現在の企業価値は約1087億円
Headway(同名の米国のメンタルヘルス企業とは別の会社)は、その4週間後に正式にローンチした。現在、同社のプロダクトは5種類に拡大し、世界で1億6000万人のユーザーを抱える。フォーブスの試算によれば、Headwayの年間収益は1億6000万ドル(約242億円)、企業価値は7億2000万ドル(約1087億円)に達する。社員数は約450人で、東欧4カ国に5つのオフィスを構えている。
ソーシャルメディアのドゥームスクロールを防ぐことを目的に設計されたHeadwayのアプリは、自己啓発からビジネスまで幅広いテーマを扱う15分間のブックサマリー(書籍の内容の要約)を提供するライブラリーだ。2021年には、「Impulse(インパルス)」と呼ばれる脳トレアプリもラインナップに加わった。Impulseは自己理解を目的としており、IQ・性格タイプ・スキルを測るクイズ、パズルを通じて「自分を知る体験」を提供している。
Headwayのプロダクト群に含まれるすべてのコンテンツは、社員が制作しており、人工知能(AI)の利用は最小限にとどめている。「その点では昔ながらのやり方なんだ」とCEOでもあるパブロフスキーは語る。推定33%の株式を保有する彼は、同社の最大の個人株主だ。
最大の柱はサブスクリプション、動的な価格戦略で収益化
Headwayの収益源は主に3つあり、その最大の柱はサブスクリプションだ。同社はユーザー1人あたりの収益を最大化するために、極めて動的な価格戦略を採用している。アプリをダウンロードすると、週7.99ドル(約1206円。年換算で400ドル[約6万円]超)という高額プランが提示されることもあるが、年間19.99ドル(約3018円)以下にまで価格が下がる割引パッケージや「ギフト」オファーが表示される場合もある。
Headwayはまた、レッスンに対応したイラストなどの有料コンテンツからも収益を上げている。一方、広告は限定的にとどめており、アプリ内のアフィリエイトリンクを通じて発生するアマゾンの書籍販売からもコミッションを得ている。
ロシアによる全面侵攻後も成長は継続、収益は3倍に拡大
パブロフスキーによれば、Headwayは2020年以降にすでに黒字化しており、ウクライナでの戦争下でも成長を続けているという。全面侵攻が始まった2022年には収益が前年から90%増加し、その後は3倍に拡大した。
「誰ひとりとして妥協しようとは思わなかった」と語るのは、Headwayでチーフ・オブ・スタッフを務めるオレクサンドル・ヤロシェンコだ。「アントンは常にオープンで透明性の高い対話を続けていた」と振り返る。
ヤロシェンコによれば、Headwayはあらかじめ緊急時のための資金を確保しており、2022年の業績を損なうことなく社員の避難費用を賄えたという。
2022年、Headwayは新たなプロダクト「Nibble(ニブル)」を立ち上げた。これは中高年層を主なターゲットとし、理系(STEM)や人文科学の深い知識を学べるレッスンを提供するアプリだ。現在は600万人のユーザーを抱えている。また同年、法人向けサブスクリプション販売という新たな収益源も確立し、企業顧客は500社に達した。
「スーパーアプリ化」を退け、ブランド戦略を堅持
「ある時点で、複数のアプリをひとつに統合して“スーパーアプリ”にしようという話も出ていた」とHeadwayのヤロシェンコは語る。しかしパブロフスキーは、“ハウス・オブ・ブランド”という方針を貫いた。
「高級レストランに行くと、フォークが3本、ナイフが3本あって、バター専用のナイフもある」とヤロシェンコは説明する。「アントンは、それぞれの顧客層の目的を達成するために、どんなツールを使うかを明確にしたかったんだ」。
こうしてHeadwayは新しい製品の投入を続けた。2023年にはライフコーチングのプラットフォーム「AddMile(アドマイル)」を、2024年にはソーシャルスキルの学習アプリ「Skillsta(スキルスタ)」をリリースした。だが、同社の成長の大部分を支えたのは、ImpulseとHeadwayの急拡大だった。両アプリのユーザー数は2022年の合計2000万人から、現在では1億5000万人にまで増加しており、全体の9割以上を占める。


