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2025.10.22 16:00

スローダウンが人生を劇的に変える、心理学者が解説する「あえて立ち止まる勇気」の大切さ

Shutterstock.com

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大人になることは、さまざまな責務が常に山積みになっているように感じることだという不文律がある。そうした責務は自己成長からキャリア、恋愛関係まで多岐にわたる。人生のあらゆる局面で、成長への継続的な努力が求められる。それは本質的には健全なことだ。だが、最高の自分を追い求めるあまり、過剰に自分を駆り立てることになりがちだ。

これは微妙に現れることが多く、少しプレッシャーを感じたり、休みを少しけずったりしながら遅れを取るまいと頑張ることがデフォルト設定になってしまう。朝起きると、まだ直さなければならないこと、改善しなければならないこと、達成しなければならないことで頭がいっぱいになっている。やることリストは増える一方で、多くの人が目覚めた瞬間に不安を感じているかもしれない。

このような常に付きまとうプレッシャーに加え、デジタルに支配された文化の中で暮らしていると、切迫感や「十分にできていない」という感覚が増すばかりだ。そして、ある目標を達成することに注力していると人生が小さく感じられるようになり、「通り過ぎていく」だけのように思えることが多い。

もっと急ぎたい、もっと達成したいと感じるかもしれないが、より健康的で、いろんな意味でスムーズな生き方はスローダウンすることだ。今この瞬間に意識を完全に向けることで、自分の人生をどう生きるかを変えることができる。

「今」に意識を向けることは難しい

スローダウンとは、シンプルに現在に意識を向けることを意味する。簡単なことのように聞こえるかもしれないが、実際には難しい。というのも、 現代は、注意を簡単に奪うものがあまりにもあるからだ。端末に次々と届く通知は尽きることのない「まき餌」で、場合によってはSNS中毒やマルチタスクの習慣さえも、注意が途切れ途切れになる一因となる。

専門誌『Frontiers in Psychology(フロンティアーズ・イン・サイコロジー)』に2021年に掲載された研究では、さまざまな背景を持つ300人以上を対象に、SNSがユーザーの注意をそらす理由と、頻繁なSNSチェックに駆り立てるものを調べた。

その結果、SNSに引き寄せられるのは、常につながっていたいという欲求や取り残されることへの恐怖(FoMO:Fear Of Missing Outの略)、退屈や不快を感じるタスクから簡単に逃避できるようになるという、タスク絡みの注意散漫に原因があることがわかった。

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翻訳=溝口慈子

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