犬は、家畜化された伴侶動物として、何千年にもわたり人間とともに進化してきた。犬の人間に対する忠誠心、社会的知性、感情的共感は、動物界に並ぶものがない。したがって、犬を家族に迎えるとき、その名付けは当然ながら、単なる形式的な行為というより一種の儀式として、文化や心理的要素、社会的傾向を反映したものになりがちだ。
ペットケアサービスを手がけるTrustedHousesitters(トラステッドハウスシッターズ)のデータによると、2025年の米国で最も人気のある犬の名前トップ10は以下のとおりだ。
2025年版最も人気のある犬の名前トップ10
1. ルナ(Luna)
2. ベラ(Bella)
3. ルーシー(Lucy)
4. チャーリー(Charlie)
5. デイジー(Daisy)
6. ロージー(Rosie)
7. クーパー(Cooper)
8. セイディ(Sadie)
9. ベイリー(Bailey)
10. マックス(Max)
このランキングからわかるのは、どんなことだろうか。
一番人気は「ルナ」
2025年のランキング1位は、ラテン語に由来する「月」を意味する名前、ルナだ。スペイン語にも同じ単語があり、やはり同じ意味を持つ。
「ルナ」は、ポップカルチャーの影響もあって人気が高まっており、2010年代後半から着実に順位を上げてきた。
時代による変遷
マックス、ベラなどの名前は、10年以上もランキングで確固たる地位を維持している。それらはシンプルな強い音であり、犬にも理解しやすい。
特に、「犬にとって理解しやすい」という点は重要だ。動物とのコミュニケーションに関する研究によると、犬は、子音の響きが強く、音節がはっきり区切られている発音の名前に反応しやすい。「マックス」などはまさにその条件を満たしており、それが長年の人気の理由かもしれない。
そのほか、セイディなど、ここ5~10年で人気が急上昇した名前もある。
2025年のトップ10から姿を消した名前で特筆すべきは、ロッキー、ベアといった、かつての定番だ。こうした変化は、飼い主の世代交代も要因の一つだろう。現在のペット飼育層の主流であるZ世代の飼い主は、より「美意識」と結びついた、風変わりな、あるいは感情に訴える名前を好んでいる。
地域ごとの特色
地域ごとの命名傾向から、名前の決定に影響を与える要素がさらに浮き彫りになる。コロラド州やバーモント州では、ウィロー(Willow:ヤナギ)やメイプル(Maple:カエデ)といった、自然物にちなんだ名前がしばしばトップ5に入る。これらの地域は、アウトドア活動がさかんで、レトリーバーや牧羊犬といった、活動的で自然豊かな環境を好む犬種が多い土地柄でもある。
これに対して、カリフォルニア州やニューヨーク州のような大都市圏を擁する地域では、ルナ、マイロ(Milo)、ココ(Coco)といった名前が多く見られる。こうした「環境」というレンズを通して見ると、犬の名前は、文化的な多様性と同時に、地域性を問わない流行の影響も反映していることが明らかになる。
さらに、犬に付ける名前は、我々が文化的環境から受ける「圧力」を反映しているとも考えられる。都会の飼い主は、可愛さや斬新さ、流行を優先する傾向があるのに対し、田舎の飼い主は、周囲の環境やライフスタイルを反映した、伝統的あるいは自然に根差した名前を選びがちだ。



