ポップカルチャーの影響
ポップカルチャーは、ペットの命名トレンドに最も大きな影響を与える要素の一つだ。映画『マスク』に登場した犬の「マイロ」のような名前が、その後どれだけ流行したかを考えてみればわかる。
また、「有名人のペット効果」もある。インフルエンサーやセレブリティがペットの名前を公表すると、その名前がしばしば拡散する。例えばTikTokでは、「マイロ」「クーパー」「セイディ」といった名前の犬を取り上げているアカウントに、何百万人ものフォロワーがいる。これは一種のフィードバックループを生み出す。その名前が人気になると、より多くのペットにその名前が付けられ、認知度がさらに高まるのだ。
名付けの生物学的考察
こうしたペットの名付けは、生物学とも関係があるのだろうか。実は、かなり深い関係がある。
人間は動物との絆を、生物学的な手がかり、すなわちネオテニー(幼さを残す特徴)や声のトーン、社会的模倣(相手と同じ行動をすること)を通じて形成する。そうしたなかで名付けは、ペットと飼い主のあいだの社会的契約を強化する役割を果たす。行動生物学の研究によると、犬は自分の名前を、条件付けされた聴覚信号として認識し、多くの場合、それを正の強化(好ましい刺激)と結びつけている。
さらに、犬に名前を付ける行為は、より広い社会集団に向けた信号でもある。それは、進化学でいうところの「コストのかかるシグナリング(costly signaling:何らかの目に見えるコストを負担することで、自らの価値を他者に伝える行為)の一種だ。「ルナ」や「ココ」といった名前を選ぶことは、その人の美的嗜好や価値観、文化的帰属を示唆する場合がある。言い換えればペットの名前は、ソーシャルカレンシー(social currency:SNSなどで情報をシェアすることによって、シェアした本人の社会的価値が上がる時の影響力)の一つのかたちなのだ。
ペットに付ける名前は、気まぐれで個人的で、我々が人生で経験することと同じくらい固有のものと思われるかもしれない。しかし上記のように考察していくとこうした選択は、我々の人生と同様に、生物学や文化的、心理的な影響が複雑に絡み合う中から生まれていることに気づかされる。人間と犬との関係が進化するにつれて、我々が彼らに象徴として与える名前もまた進化していく。
2025年には、ルナが人気ランキングのトップに立ったが、いずれにせよ変わらないのは、犬に名前を付ける行為が、単なる識別のための手段ではなく、我々自身の本質的な何か――自らの物語や、置かれた環境、価値観――を反映する行為であるという事実だ。


