利益率の低さで敬遠された、低所得層向け医療にテクノロジーで挑む
政府職員となる以前にOptum Groupの幹部を務めていたスラヴィットは、テクノロジーで低所得層や医療アクセスが限られた人々の医療を改善できると考えてきた。ベンチャーファンドが歴史的にこうした層への投資を避けてきたのは、メディケイドの利益率が極めて低いことに加え、住宅不足や食環境の悪さといった社会的問題が多く、治療が複雑化しやすいからだ。
「この分野の問題は明らかだった」とスラヴィットは語る。「だが、資本や起業家精神、イノベーションを、解決策とする試みも一筋縄ではいかない。とはいえ、そうした力こそが米国の得意分野なんだから、もっと活かすべきだと思う」。
メディケイド保険の課題に、徹底した実行力で応える
Town Hall Venturesは、2023年にティーンエイジャー向けにグループセラピーを中心としたオンライン行動医療を提供するMarble Healthに出資した。パートナーのミーラ・マニは、セラピー系スタートアップHeadwayの出身の同社の創業者たちが、メディケイド保険で精神医療を提供する上で必須の、「徹底した実行力を備えている」と評している。
低い評価を付けたTown Hallを選んだAI企業、その支援で企業価値が今や約1694億円に
また同社は、2024年には、低所得層の高齢者が自宅で健康管理を行えるよう支援するHabitat Healthを、医療大手カイザー・パーマネンテと共同で立ち上げた。同社は今年から、サクラメントとロサンゼルスで、メディケアとメディケイドの両方を利用する高齢者を中心にサービスを開始した。「Town Hall Venturesの最大の強みは、使命感と実績の両立にある」とウィーランは語る。
この2つの要素が、投資先の起業家たちにも同社の価値を納得させている。2023年、同社は人工知能(AI)を活用して患者情報の整理やドキュメント作成を自動化し、がん治療のプロセスを支援するナッシュビル拠点のスタートアップ、Thyme Careへの投資を共同で主導した。共同創業者でCEOのロビン・シャーは、当時110社の出資元の候補から5社に絞り込んだ経緯を振り返る。Town Hall Venturesが提示した同社の評価額は、最高額の1億5000万ドル(約231億円)よりも2000万ドル(約31億円)低かったにもかかわらず、シャーは取締役会と既存投資家を説得して同社を選んだという。現在、Thyme Careの企業価値は11億ドル(約1694億円)に達している。
「彼らがいなければ、ここまで来られなかったかもしれない」とシャーは語り、Town Hall Venturesの医療分野での専門知識とネットワークの広さを称えた。


