ヘルスケア

2025.10.22 09:15

できる人ほどよく眠る。睡眠の質はカネで買う時代へ

gettyimages/Marcos Calvo

gettyimages/Marcos Calvo

かつて「寝ないで頑張る」が努力の象徴だった時代があった。「24時間戦えますか」というエナジードリンクのキャッチコピーを記憶している人も多いのではないか。

しかし今、当時と同じ世代が口にするのは「よく眠りたい」という言葉だ。“睡眠の質”を整えることが、健康だけでなく、翌日の集中力や創造力の源として捉えられる時代へと変化した。そんな意識の変化を裏づけるのが、株式会社10による「睡眠実態調査」だ。

【調査概要】
実査機関:自主調査(10 Inc.)
調査手法:オンラインコミュニティ調査(MROC)
対象地域:全国
調査期間:2025年8月6日(水) ~ 2025年8月12日(火)
調査対象者:20歳~69歳の男女・318名(男性122名:女性196名)

理想と現実の睡眠差は「80分」

この調査ではまず、理想の睡眠時間と実際の睡眠時間が質問された。理想の睡眠時間は「7~8時間未満」が最多である一方、実際の平均は6.14時間。理想との差は80分にのぼる。特に60代では平均5.79時間ともっとも短く、4人に1人が「5時間未満」と回答した。

理想と現実の差は、単なる生活リズムの乱れというより、情報過多や不安による「脳の過稼働」を反映している。スマホを閉じても頭が休まらない。いまや眠れない社会が常態化していることを表している。

ショートスリーパーへの憧れは半数

また、ショートスリーパーへの憧れについても質問された。かつては「短く眠っても成果を出せる人」が称賛されたが、今回もショートスリーパーへの憧れがある人は約半数も存在した。憧れる理由としては、「起きている分、活動ができる」といった理由が目立った。一方で短時間睡眠へのイメージは「健康に悪そう」「疲労が蓄積されるのではないか」というものから「そもそも眠るのが好きだから減らしたくない」という声も多く見られた。ショートスリーパーに憧れを持ちつつも「寝ないこと」を誇る人は少数派となり、むしろ「よく眠る人の方が仕事の質が高い」という共通認識が広がりつつある。

この変化の背景には、ウェルビーイングの普及と、「自分を整えること」が成果につながるという価値観の成熟がある。

自分時間の最優先は「睡眠」

自宅で過ごす「自分時間」でもっとも重視されるのは「睡眠」と回答した人は約半数で、「食事」や「趣味」を上回り、睡眠が生活の中心になりつつある。疲れを癒やすためだけでなく、翌日の集中力を整える時間として、眠りを戦略的に管理する人が増えている。

浅い眠りが映す社会の疲弊

また、9割以上の人が睡眠に何らかの悩みを抱えていたこともわかった。若年層では「寝ても疲れが取れない」、中高年では「夜中に目が覚める」など、年代を問わず「深く眠れない」という共通課題が見られた。

この「浅い眠り」は、働き方や情報の密度、そして常に何かを考えていなければならない社会の副作用でもある。

睡眠環境を買う60代、習慣を変える40代

睡眠の質を整えることに関して、60代は「寝室環境を整える」「寝具を工夫する」など快適な環境づくりを重視。一方40代は「決まった時間に寝る」「温かい飲み物を飲む」など、日々の習慣を見直す人が多い。

最近では、血流や体温を調整して睡眠の質を高めるリカバリーパジャマや寝具も注目されている。また眠りを誘うアロマなども女性に人気だ。これらは浅い眠りを補うサポートツールとして、消費者の関心を集めている。

繰り返しになるが、かつての「寝ない世代」が、今は「眠りを整える世代」へと変わりつつある。浅い眠りを補う商品やサービスの拡大は、この価値観の変化を象徴する現象でもある。いま、人々が競っているのは睡眠時間の短さではなく、「眠りの質の高さ」という見えない指標なのかもしれない。

引用元:10 Inc.調べ 

プレスリリース

文=福島はるみ

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