ロシアのウクライナ全面侵攻はカザフスタンを西側に近づけるのではないかと当初期待されたが、ロシアはむしろカザフスタンに対するグリップを強めている。トカエフは公式行事でカザフ語を用いるなど独立性を示す象徴的なジェスチャーをしているものの、依然としてロシアに大きく依存しているのが実情だ。カザフスタンで2022年に起こった騒乱に際して、ロシアはトカエフの政権維持を手助けし、その後、両国間の貿易は拡大した。ロシアのドミトリー・メドベージェフ安全保障会議副議長(前大統領)は同年、カザフスタンを「人工国家」とまで呼んでいる。
ロシアの故ボリス・エリツィン初代大統領も、カザフスタンやウクライナなど旧ソ連構成国との国境線を見直す可能性を示唆したことがあった。一方、トカエフは慎重な路線をとっている。ロシアによる他国の領土の併合を認めることを拒み、国連のロシア関連決議の投票は棄権し、ウクライナには人道支援を送ってきた。
今回の渋滞はクレムリンにとって、ロシアが依存する物流の生命線が制裁で蝕まれていることをあらためて思い起こさせる出来事になった。西側からの圧力を相殺するためロシアが中央アジアに頼ろうとするなか、国境にできたトラックの長い列は、ロシアのパートナー諸国でさえ、ロシアと親密でありつづけることのリスクを計算し始めていることを物語っている。


