代償が高くなる対ロ支援
安全保障アナリストのジェイソン・ジェイ・スマートは筆者のインタビューで「カザフスタンはようやく制裁を履行し始めています。ロシアを支援するコストが急激に高まっていると認識しているからです」と話した。スマートによれば、カザフスタンは西側の金融への依存度が高まっており、これが政策の選択に影響を与えているという。
制裁だけが原因ではないとみる専門家もいる。米シンクタンク外交政策研究所のマクシミリアン・ヘス研究員は筆者の取材に、貿易面のこうしたごたごたは珍しいものではなく、よくある2国間摩擦から生じている可能性もあると述べた。
ザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領は、ロシアとの面と向かった対立は避けつつ、米国との関係強化を図っている。中央アジアメディアのセントラルアジア・タイムズは9月22日、トカエフとトランプの電話会談後、米国からカザフスタンに機関車を供給する42億ドル(約6300億円)相当の契約で両国が最終合意したと報じている。機関車に関する契約としては史上最大の規模とされる。
カザフスタンのセリク・ジュマンガリン副首相はブルームバーグの昨年のインタビューで、国内産業を損なうような「制裁にはやみくもに従いません」と述べ、「自国の経済的利益を第一に考えます」と強調していた。それでも、西側による監視が強まり、ロシアを支援するコストが高まるにつれて、カザフスタン政府の姿勢は静かな抵抗から慎重な順守へと変わってきている。
ただ、Lenta.ruはロシアの政治アナリストの見方として、カザフスタン政府は西側から並行輸入を監視するよう圧力を受けているものの、ロシアに公然と反抗するのは避ける可能性が高いとも伝えている。
中央アジアに広がる燃料ショック
ロシアの製油所の混乱やガソリン輸出禁止による影響は、中央アジアにも波及してきている。米メディアのラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティー(RFE/RL)は、数カ月にわたる集中的なドローン攻撃を受けてロシア政府が導入した燃料輸出制限のあおりで、中央アジア各国で燃料の不足や値上がりが起こっていると報じている。燃料の大半をロシアからの輸入に頼るタジキスタンでは、ガソリン価格が1リットルあたり約1.30ドル(約196円)に達し、地域で最も高い水準となっている。


