9月中旬以降、中国からのトラック数千台がカザフスタンとロシアの国境で滞留し、ロシアの防衛産業を支えるアジア製デュアルユース(軍民両用)品の流通に遅れが出ている。
ユーラシアの地政学的な駆け引きがここへきて再び変化しつつある。これは、米国のドナルド・トランプ大統領がウクライナ支援に前向きな発言をし、ウクライナによるロシアの製油所に対するドローン(無人機)攻撃が急増するなかでの動きだ。ロシアの製油所の生産量は圧迫されており、ブルームバーグ通信の15日の報道によるとロシアの海路での燃料輸出量は現在、日量平均188万バレルと、2022年2月のウクライナ全面侵攻の開始以降で最低に落ち込んでいる。
カザフの検査強化で国境の渋滞が深刻化
ロシアのニュースサイト「Lenta.ru(レンタ・ルー)」はこのほど、カザフスタンとロシアの国境検問所にトラック2500台前後がとどまっていると伝えた。これらのトラックは電子機器、ドローンやその部品、西側のブランド品など、対ロシア制裁の対象となる製品を積んでいる可能性があり、カザフスタンの税関当局は制裁逃れに利用されていないか検査を強化しているもようだ。
ロシアの経済紙コメルサントは今月2日、カザフスタンとロシアの国境付近で9月中旬以降、双方の検査強化にともなって渋滞が長くなってきたと報じた。ロシアの物流会社の幹部マクシム・エメリンは同紙に、カザフスタンの政策転換が関係している可能性があるとの見方を示している。「はっきり言えるのは、これが一時的な障害などではなく、むしろ新たな現実、つまり管理の厳格化と西側による制裁の順守強化だということです」
コメルサントは、滞留しているトラック数は推定7500台にのぼるとする業界関係者の話も伝えている。混乱は当初の報道時点よりも深刻化した可能性がある。
この物流遅延は、カザフスタンがロシアやベラルーシ向け貨物の検査を厳格化した9月中旬に始まった。以前は軽微な遅滞にとどまっていが、1週間ほど待たされるとみられる車列ができるようになった。欧州メディアのEUトゥデイはロシアメディアの報道として、機微な製品を運んでいる可能性があるトラックの最大99%が厳重な検査を受けていると伝えている。関係者らは、この問題は中国とカザフスタン、ロシアの3国間の貿易や、この地域における軍民両用品の流通の再編につながりかねないとして状況を注視している。



