最高のバレンシア風パエリアに出会うには
バレンシアでは、平たい鍋に盛られた米粒の数と同じくらい、パエリア専門店がひしめいている。本場のバレンシア風パエリアを味わうのに最適な場所が、アルブフェラ湖の近くにある「ノウ・ラコ」だ。市内中心部から約10キロの距離にある。レストランの建物は、バレンシアの伝統的な農家であるバラカ(アシで覆われた急勾配の屋根を持つ白い建物)を利用している。ノウ・ラコへは車で行くこともできるが、最後の区間を水上で移動する方がはるかに趣がある。湿地帯を航行する伝統的な小船、アルブフェレンクに乗って短い船旅を楽しもう。バードウオッチングに興味があれば、道中でこの地域に生息する350種の鳥を探すという楽しみもある。
バレンシア市内にとどまりたいなら、伝説的な「カサ・カルメラ」に行こう。1920年代初頭にホセ・ベレンゲルによって海の家として創業された同レストランは現在、4代目が営んでいる。
レストラン「レバンテ」もまた、50年以上前に料理人ラファエル・ビダルの両親によって創業された家族経営の店だ。ビダルの先代はパエリア作りの名人で、1976年にスペイン国王に提供したことで一躍有名になった。ビダルはその後、パエリアの普及に貢献してきた。有名料理人のホセ・アンドレスが米ニューヨークでレストラン「レニャ」を開店した際、ビダルを呼び寄せ、従業員に本格的なパエリアの調理法を指導させた。ビダル家は現在、バレンシア中心部に2号店を構えているが、歴史愛好家なら車で30分ほど北西へ向かい、ベニサノの村にある本店を訪れるべきだろう。
バレンシアにはパエリア以外にも魅力的な米料理が
バレンシアのような米の産地では、パエリアは米を使った数多くのレシピのうちの1つに過ぎない。他にも、米を炊くためのだしに使う魚を米とは別に出すアロス・ア・バンダや、魚介類と米を使ったアロス・デル・セニョレト、米をイカ墨で黒く染めるアロス・ネグロなどがある。もし米に飽きたら(地元の人には内緒だが)、フィデワという選択肢もある。これはパエリアの親戚とも言える料理で、米の代わりに細い麺が使われており、調理するとパリッとした食感に仕上がる。先述のノウ・ラコでは、絶品のフィデワも提供している。
それとも、魚介類の入ったスープ状の米料理がお好みだろうか? それなら南下してカルデロを試してみよう。カルデロは隣接するムルシア州の名物だと言われているが、バレンシア州南部のアリカンテ県、特にタバルカ島でも素晴らしい料理を味わうことができる。パエリアと同様、カルデロはその調理器に由来する名称だ。大きなスープ鍋に、魚介類、トマト、米を魚のだしと唐辛子とともに層になるように重ねることで、単なる食材の寄せ集め以上の味わいを生み出す。
バレンシア州に位置する地中海沿岸の町ベニドルムでは、シーフードレストラン「ポサダ・デル・マル」が40年以上にわたり、濃厚な味わいのカルデロを大皿に盛り付けて提供している。添えられるのは、卵を使わないニンニクの利いたふわふわのアリオリソースだ。これをたっぷりとかけて楽しもう。レストランの海辺の席に腰を下ろし、冷えた白ワインとカルデロを注文してゆっくりと過ごしたい。


