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2025.10.20 13:00

売上ゼロ・顧客ゼロでも時価総額3兆円──AIブームが電力と土地に拡大、2人の億万長者が誕生

Photo Illustration by Thomas Fuller/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

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人工知能(AI)とデータセンターのブームによって、数多くのビリオネアが生まれている。そして今、データセンターの基盤となる不動産までもが、10億ドル(約1500億円。1ドル=150円換算)単位の富を生み出す源となっている。

ナスダック上場のFermi America、時価総額約2.9兆円で2人のビリオネアを新たに生む

その象徴が、10月1日にナスダックへ上場したFermi America(フェルミ・アメリカ)だ。テキサス州アマリロに拠点を置く同社は、元エネルギー長官でテキサス州知事でもあったリック・ペリーが共同創業した不動産投資信託(REIT)で、株価は上場初日に初値21ドル(約3150円)で寄り付き、55%上昇の32.53ドル(約4880円)で取引を終えた。創業9カ月のFermiの時価総額は、売上がまだゼロであるにもかかわらず190億ドル(約2.9兆円)に達し、少なくとも2人のビリオネアを生み出した。

最大の勝者となったのは、同社の社長兼CEOのトビー・ノイゲバウアー(53)だ。彼は、リック・ペリーとその息子グリフィン・ペリー(42)とともに、同社を共同創業した。テキサス州の元連邦下院議員ランディ・ノイゲバウアーの息子である彼とその家族は、目論見書の分析によると、同社の株式の約28%を保有しており、その持分の価値は1日の終値ベースで60億ドル(約9000億円)に達する。その多くは、妻と2人の子どものための信託に組み入れられているとされる。

2番目に大きな持分を持つのは、グリフィン・ペリーで、約11%の株式を保有している。その評価額は23億ドル(約3450億円)にのぼる。父親のリック・ペリーが取締役を務めているのに対し、息子のグリフィンはFermiで正式な役職には就いていない。

リック・ペリー自身も、ビリオネアには届かないものの、約5億4000万ドル(約810億円)相当の株式を保有している。フォーブスは2019年、当時エネルギー長官だったペリーの資産を300万ドル(約4億5000万円)と推定していた。Fermiの広報担当者はコメントを控えた。

収益ゼロ・顧客ゼロ、創業半年で約9億6000万円の損失

今年1月に設立されたFermiは、これまで1セントの収益も上げておらず、実際には創業後の半年で640万ドル(約9億6000万円)の損失を計上している。とはいえ、まだ顧客が存在しないことを考えれば、それも不思議ではない。目論見書の中で同社は現在、「潜在的な顧客の獲得に積極的に取り組んでいる」としながらも、具体的な社名は挙げず、その代わりにイーロン・マスクのxAIやOpenAI、Anthropicといった企業を「潜在的なハイパースケーラー(大規模データセンター事業者)のテナント候補」として挙げている。

Fermiはさらに、初の1ギガワット分の電力供給に関する意向書(LOI)を、「信用力の高いテナント」との間で締結したと主張し、市場における最近のデータを引用して、この取引から15億ドル(約2250億円)の収益を得られる可能性があると試算している。ただし、同社はこうした数字をあくまで「将来の売上予測ではなく概算的な参考値」として示している。

競合は既存大手データセンター、CoreWeaveは時価総額約9兆円

新興のFermiが今後競合するのは、すでに業界で確固たる地位を築いているデータセンター運営企業だ。その筆頭のCoreWeave(コアウィーブ)は、マイクロソフトやメタ、OpenAIといった名だたる企業を顧客に持ち、3月の上場以来、株価を3倍以上に急騰させた。時価総額が600億ドル(約9兆円)に達した同社は、5人のビリオネアを生み出した。

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翻訳=上田裕資

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