経営・戦略

2025.10.24 12:00

「ステークホルダー資本主義ランキング」2025年度版、社会性と事業性の「好循環」で勝つ

2025年10月24日発売のForbes JAPAN12月号第一特集は、「新いい会社ランキング2025」特集。上場企業を対象にした毎年恒例の大企業特集では、今年は「ステークホルダー資本主義ランキング」と、新たに「ESGフィット度ランキング」の2つを掲載している。ステークホルダー資本主義ランキングは、「地球(自然資本)」「従業員」「サプライヤー・地域」「株主」「顧客・消費者」の5つのカテゴリーで解析。ESGフィット度ランキングでは、サステナビリティ情報開示の義務化が進むなか、ESGの取り組みを自社の「稼ぐ力」につなげている企業を導き出した。同号では2つのランキング、IPOランキング上位の11企業の経営者インタビューを一挙掲載している。

社会性を追求するだけでは、企業は永続できない。社会課題の解決を「稼げる」事業に昇華させ、さまざまな利害関係者の期待に応える企業はどこか。2025年版「ステークホルダー資本主義ランキング」ベスト20を一挙公開する。


社会課題の解決をビジネスの機会ととらえ、稼いだお金をステークホルダー(利害関係者)に還元しながら、さらなる価値創造に投資する。社会性と事業性の「好循環」で勝ち続ける──.2025年版ランキングの経営者インタビューで感じたのは、「社会貢献で稼ぐ」ことへの意欲と正当性の高まりだ。

「トランプ2.0」の影響などで米国を中心に「反ESG」の動きが見られるなか、Forbes JAPANは今年もサステナブル・ラボの協力のもと、「地球(自然資本)」「従業員」「サプライヤー・地域」「株主」「顧客・消費者」の5つの観点からなるステークホルダー資本主義ランキングを実施した。東証プライム市場の1658社を対象に、25年7月1日時点で各社が開示していた最新のデータを用いてランキングを算出した。

業種ごとに相対評価し算出した各指標のスコア(偏差値)に対して、ESGのデータ分析に詳しいサステナブル・ラボのジャッキー・ヤンやアナリストがテーマ別にウェイト付けし、さらに業種別に設定されたマテリアリティ(重要課題)にのっとって重み付けを実施。各テーマのスコアをもとに総合スコアを出した。ここでは、ステークホルダー資本主義ランキングで上位20位内に入った企業の概要と、特筆すべきポイントを紹介する。

ランキング算出方法
東証プライム市場の1658社が対象。2025年7月1日時点で各企業が開示している最新のデータをもとにサステナブル・ラボが解析。「地球(自然資本)」には「売上高あたりのGHG排出量」「SBTi 脱炭素目標の有無」など計12指標、「従業員」には「女性従業員比率」「従業員満足度」「育児休業取得状況」など計8指標、「サプライヤー・地域」には「サプライチェーン労働基準」「海外売上率」など計10指標、「株主」には「取締役会におけるスキル保有状況」「配当性向」など計8指標、「顧客・消費者」には「製品の安全性と品質」「売上高成長率」など計7指標を用いた。業種ごとの相対評価で指標スコアを求め、業種のマテリアリティをもとに重み付けして最終スコアを算出した。

1|味の素

総合スコア:82.60 地球(自然資本):77.99 従業員:92.54 

サプライヤー・地域:80.76 株主:93.52 顧客・消費者:68.18

「アミノ酸のはたらきで食と健康の課題解決」を志とし、ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)経営を推進。「ヘルスケア」「フード&ウェルネス」「ICT」「グリーン」の4領域を中心に持続的な成長を目指す。2025年3月期の連結決算売上高は1兆5305億円(前年比6.3%増)。営業利益は1593億円(同7.9%増)、純利益は702億円(同19.3%減)。

評価ポイント|2025年3月期は前期比増収増益。純利益減でも株主還元は増配を継続。26年3月期は純利益が過去最高となる見通し。最大1000億円の自社株買いを発表し、好業績を反映した積極的な株主還元などがスコアに好影響をもたらした。25年2月のCEO交代時には、後継者育成計画により短期間で新社長の指名を実現。非常時も経営の空白をつくらず実効性のあるガバナンス運営を行った。

2|横河電機

総合スコア:80.94 地球(自然資本):87.07 従業員:90.85 

サプライヤー・地域:72.57 株主:92.71 顧客・消費者:61.51

計測・制御システムを基盤に事業を展開する工業計器国内首位の電機メーカー。YOKOGAWAグループ会社とともに、計測、制御、情報の技術を軸に最先端の製品やソリューションを提供している。2025年3月期の連結決算売上高は5624億円(前年比4.1%増)。営業利益は835億円(同6.0%増)、純利益は521億円(同15.5%減)。

評価ポイント|海外売上比率が70%超と、グローバル市場で強さを発揮。近年はDXソリューション事業にも力を入れる。2025年3月期は受注額、売上高、営業利益、経常利益でそれぞれ過去最高を更新。中東の案件が受注額の増加などをけん引した。株主還元については、安定的な増配方針のもと3期連続増配を見込む。25年末までに200億円を上限とする自社株買いを発表。

3|トヨタ自動車

総合スコア:80.79 地球(自然資本):87.77 従業員:72.37 

サプライヤー・地域:87.82 株主:77.33 顧客・消費者:78.69

世界最大級の自動車メーカー。傘下に日野自動車やダイハツ工業をもち、SUBARUなどとも提携している。ハイブリッド車や電気自動車の開発を推進し、2025年9月には実証都市「Toyota Woven City」が始動。25年3月期の連結決算売上高は48兆367億円(前年比6.5%増)。営業利益は4兆7955億円(同10.4%減)、純利益は4兆7650億円(同3.6%減)。

評価ポイント|Tier1の仕入先は約400社。全体で約6万社に及ぶ取引網をもち、年7兆円規模を発注。相互信頼を軸に仕入先サステナビリティガイドラインを展開し、国内主要約1000社が賛同・署名している。一次サプライヤーが二次以降にも展開する仕組みで、グローバルにも共有。持続可能な調達とサプライチェーン全体の責任ある成長を推進している点が高評価につながった。

4|良品計画

総合スコア:79.80 地球(自然資本):83.69 従業員:82.80 

サプライヤー・地域:74.79 株主:81.44 顧客・消費者:76.26

「無印良品」ブランドを展開する小売企業。生活雑貨、衣料品、食品などを取り扱う。2024年8月期の連結決算売上高は6616億円(前年比13.8%増)。営業利益は561億円(同69.4%増)、純利益は415億円(同88.5%増)。

評価ポイント|2024年2月に循環推進部を設立し、リユース・リサイクル・レンタルの3分野で資源循環を推進。多様な顧客接点を生かして使用済み商品の回収を促進し、資源循環の入り口を広げる。資源循環と収益性の両立を図る体制と実績が高評価に寄与。

5|武田薬品工業

総合スコア:79.68 地球(自然資本):85.10 従業員:89.17 

サプライヤー・地域:86.68 株主:71.89 顧客・消費者:65.58

1781年創業の大手製薬企業。売上高の9割を海外市場が占め、医薬品を通じてグローバル社会に貢献。2025年3月期の連結決算売上高は4兆5815億円(前年比7.5%増)。営業利益は3425億円(同60.0%増)、純利益は1079億円(同25.1%減)。

評価ポイント|従業員アンケートではエンゲージメントとウェルビーイングで高スコアを獲得し、ワークライフバランスも改善。ウェルビーイング関連の独自プログラムを各国で展開するなど、従業員の働く意欲と健康を支える仕組みを積極的に構築している。

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解析・評価=サステナブル・ラボ(ジャッキー・ヤン) イラストレーション=ジャック・ハドソン

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