アジア

2025.10.18 09:00

トランプ「130%対中関税」はTACO必至、だが今後2週間は波乱含みの展開に

miss.cabul / Shutterstock.com

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世界1位と2位の経済大国、合計の国内総生産(GDP)が45兆ドル(約6800兆円)にのぼる国同士の「相互確証破壊」は誰の利益にもならない。

もちろん、空売りで儲けようとしている一部のヘッジファンドは、ドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が再び殴り合うのを見て喜んでいるかもしれない。だが、中国に130%の関税を課すというトランプの脅しは口先だけのものとみてまず間違いない。米国経済にしても中国経済にしても、そのような極端な措置に耐えられる余裕はないからだ。おそらく、トランプのマンガじみた高関税が11月1日にする前に、冷静な判断が勝ることになるだろう。

とはいえ、その日までの2週間あまりは、市場が必要としないほど混乱し、疑心暗鬼に駆られる日々になるかもしれない。というのも、いま目の当たりにしているのは、「止められない力が動かせない物体にぶつかったらどうなるか」というパラドックスの地政学版のような状況だからだ。ここでの「止められない力」はトランプ、「動かせない物体」は中国だ。

このエゴの衝突をさらに悪化させているのは、トランプも習も世間で語られている以上に国内で追い詰められていることだ。ワシントンでは、トランプの関税、移民取り締まり、そしてジェフリー・エプスタインをめぐるスキャンダルの影響が、支持率に神経質なホワイトハウスに打撃を与えている。さらに、トランプが1月20日の就任時に引き継いだ堅調な労働市場にも変調の兆しが見られる。

北京でも、習が成功の栄光に輝いているとはとても言いがたい。たしかに、中国の直近の貿易統計は一見すると好調だ。9月には対米輸出が前年同月比で27%減少したにもかかわらず、全体の輸出は8.3%増加した。東南アジアや欧州への輸出を拡大し、対米依存度を引き下げるという習の取り組みが成果を上げている証拠だ。

だが、その裏で中国経済は深刻な苦境にあえいでいる。デフレを助長している巨大な不動産危機は企業と消費者の信頼感を損なっている。若年層の失業率は過去最悪の水準に近く、地方政府の財政は近年の何兆ドルもの借り入れの返済に追われ、惨状を呈している。直接の抗議行動も増えており、とくに貿易戦争のあおりを受けている製造業の労働者で顕著だ。また、習政権の発足から12年たっても、非効率な国有企業が依然として幅を利かせている。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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