一方、トランプにしても新たなTACOがすんなり受け入れられるとは限らない。アジアでの彼の「貿易ディール(取引)」は宣伝されているとおりには進んでいない。誰が何を約束したかで紛糾するなか、韓国はトランプから要求された3500億ドル(約53兆円)の「契約金」をそのまま渡すことはおそらくないと明確にしつつある。これは韓国のGDPの18%に相当する金額だ。
日本でも、米国との関税合意の「再交渉」に言及した人物が次の首相に就く可能性がある。再交渉の対象は具体的に言えば、ホワイトハウスが日本側に要求している5500億ドル(約83兆円)の「白紙小切手」(ピーター・ナバロ大統領上級顧問)の件だ。アイルランドのGDPに匹敵する資金を差し出すことについて、日本の多くの有権者は納得していない。
それでも、新たな世界的危機を引き起こすのは、さすがにトランプにとってもやり過ぎのように思える。かといって、今後2週間、世界の投資家が気をもむ材料があれこれ出てこないとも限らない。だが少なくとも、トランプが新たに脅している関税は現実のものになりそうにない。


