食&酒

2025.10.24 16:15

8月。靴底通す40度下で「サウナ」試飲会。来夏も挑め! 日本ワインよ新種ブドウよ

Getty Images

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8月30日、甲府駅周辺は容赦ない陽射しに包まれていた。外気温は40度に迫り、アスファルトから立ち上る熱気が靴底を通して伝わってくる。そんな灼熱の中で開催されたのが、6年ぶりとなる日本ワインコンクールの公開テイスティング──受賞ワインを一堂に試せる一般向けのワインイベントだ。しかしこの日感じたのは、日本ワインが今まさに重要な分岐点に立っているということだった。会場で目立ったのは、気候変動に挑む“新しいブドウたち”──温暖化対応品種や交配品種など、多様化する日本ワインの現在地を追った。

二極化する日本ワイン

日本ワインコンクールは、2003年に「日本ワインの認知拡大と品質向上」を目的に設立された由緒あるコンクールだ。「日本ワイン」とは、国産ブドウ100%を使用したワインのこと。その定義が法的に定まった2015年から、「国産ワインコンクール」から「日本ワインコンクール」へと改称された。今年は全国153ワイナリーから860のワインがエントリーし、グランドゴールド賞1点、金賞31点をはじめ計342本のワインが受賞した。

全国から愛好家が集まり、造り手と交流しながらワインを楽しめる
全国から愛好家が集まり、造り手と交流しながらワインを楽しめる

だが会場を歩きながら気づいたのは、ここに集まるワインが「日本ワインのすべて」ではないということだ。北海道のドメーヌ・タカヒコをはじめとする小規模生産者や自然派生産者、我が道を行く造り手のワインは、受賞リストには並んでいない。コンクールの出品条件(出品時の瓶詰め最低本数600本 ※2024年は300本、2023年以前は1000本)の制約等もあるが、それ以上に、各ワイナリーのコンクールへの姿勢によるものだろう。つまりこの公開テイスティングで出会えるのは「コンクール」という舞台での勝負に挑むワイナリーであり、「コンクールに適合する」日本ワインなのだ。「コンクールに適合する 」とは、一定の生産規模と品質の安定性を持つということ。いわば「日本ワインの正統派」とも呼べるカテゴリーを形成していると言える。

日本ではどうしても「生産量が少ない」「手に入らない」ワインに人気が偏りがちだが、受賞リストに並ぶもののように、「普通に買える」ものでも、質の高い日本ワインは見つかるのだ(ただし金賞以上受賞ワインのヴィンテージは、即完売することも珍しくないが)。

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文=水上彩 編集=石井節子

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