北米

2025.10.19 12:00

米司法省が取り組む「3Dプリント密造銃」対策――米政府とSNS企業による監視の試み

Shutterstock.com

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※編注:本稿は情報提供のみを目的としています。日本では、無許可で銃に該当するものを製造・所持などを行うことは違法です。3Dプリンターか否かを問わず、銃や弾薬に該当するものを製造・所持した場合、銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)、武器等製造法火薬類取締法といった法律に違反し、懲役刑などに処せられます。製造に着手した段階(未遂・予備)でも処罰の対象となりえます。)

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米国では、連邦法は個人使用目的の自作銃を一定条件で認める一方、複数の州は製造や設計図の共有を禁じている。この法環境の下、SNS上において、3Dプリント自作銃のコミュニティに拡大の動きがある。その中核はシリアル番号がない自作銃「ゴーストガン」にあたり、当局による追跡が難しい。メタ、Discordをはじめプラットフォーム各社は規約で削除・停止を実施し、米司法省(DOJ)は令状に基づくデータ差押えや覆面アカウントで監視を強めている。

追跡不能な自作銃、SNSが拡散の温床となり問題が深刻化

ピンク色のマシンガンや金色のスコープを付けたヒョウ柄の拳銃、3Dゲームに出てきそうなデザインのライフル、4歳児の誕生日用に作られた玩具風の突撃小銃──これらは既製品として店頭で買えるタイプの銃ではない。3Dプリンターを使って作られたこれらの品は、自作銃の信奉者が想像し、設計し、文字どおりプリントしてその成果をオンラインで共有するという新興のコミュニティから生まれたものだ。数万人のユーザーがフェイスブックやDiscordなどの非公開グループに集い、最新の制作物を見せ合い、武器のプリント方法のコツを教え合い、銃規制について嘆き合っている。

このような「3D2A」(3Dプリントと憲法修正第2条を組み合わせた造語)と呼ばれるグループの多くは、米国民の武装の権利を定めた憲法修正第2条を絶対視する人々が運営している。彼らは自らを憲法上の権利を行使する者と位置づけ、他人の生命を奪う武器である点を除けば「アートやクラフトのコミュニティのように楽しんでいる」と主張する。

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「図書館に行って銃の作り方の本を手に入れられるなら、オンラインでも同じことができるべきだ」と、6万人超のメンバーを擁するフェイスブックのグループの設立に関わったトッド・ケリーは言う。彼はグループに投稿される銃のデザインが「アート」であり言論の自由にあたると呼び、自らの政治目的を明確にしている。「我々の3Dプリントコミュニティの目標は、政府が誰かに『銃を持つな』と言えないようにすることだ」。

SNS企業と米司法省による二重の監視

しかしこの動きは、ソーシャルメディア企業と米司法省など政府からの二重の監視を受けている。これらグループはしばしば、「武器販売を助長するように見える投稿」を理由に、あるいはモデレーターによってそのように判断されて、アカウント停止処分を受ける。武器販売やその助長を行う行為は、フェイスブックやDiscord、レディットを含む主要なSNSのほとんどで禁止されている。

データ押収や潜入捜査、米司法省が水面下で進める監視活動

米司法省も彼らの活動を監視している。フォーブスが確認した捜索令状によると、連邦捜査官は2024年、すでに閉鎖されたDiscordグループ「2A Print Depot」に対して、令状に基づくグループデータの押収(データ差押え)を実施した。2023年6月から約18カ月間にわたる「メンバー間のチャットとデータリンク」を押収したという。同じ名称のフェイスブックグループを運営していた管理者2人も捜索対象となり、アカウントが調べられたと令状は記している。さらに捜査官らは、トッド・ケリーのグループのメンバー間のやり取りについても調査を行った。

令状によれば、連邦捜査官は少なくとも1つの非公開グループにおいて、2025年まで潜入用の偽プロフィールを運用していたという。さらに少なくとも1人のユーザーは前科のある重罪犯で、自身が違法に銃を使用している写真を投稿していたとみられる。また、令状に名前が記載された5人のグループ管理者のうち2人が起訴されており、1人は重罪犯でありながら銃を所持していた罪、もう1人は3Dプリント製のライフルを登録しなかった罪に問われている。両者とも無罪を主張している。

次ページ > 「ゴーストガン」による銃撃事件で社会問題化、州ごとに異なる複雑な法規制が生まれる

翻訳=上田裕資

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