ビジネス

2015.09.20

「競争の型」別戦略論を読む TYPE1 IO型




自社のいる業界がどのような競争をしているのか。そのことを知らずに、いたずらにビジネス書を読みあさってはいないだろうか。他の業種の競争の型も俯瞰的に眺めた上で、自社の競争の型を理解し、戦略を練ってみては。

アメリカの経営学者ジェイ・バーニーが1986年にに提示したのが「競争の型」の考えです。バーニーは企業の競争の型には3つあると述べました。

まず1つ目は「IO(industrial organization)型」です。

米シリアル業界やコーラ業界、日本でいえばビール業界のように、事業環境の不確定要素が少なく、参入障壁が高く、2~5社が市場シェアのほとんどを独占する状態です。したがって、各社は緩やかに差別化しながら、過当競争を避けて安定収入を得ます。

IO型の競争でいえば、世界的に知られているマイケル・ポーター米ハーバード大学教授が中心となって発展させたSCP戦略が有効です。

SCP戦略の代表的なフレームワークが「ポジショニング戦略」
ポジショニングとは業界内のライバルと比較し、どのような製品・サービスを顧客に提供していくかのポジションをはっきりさせることです。それはライバルと異なる価値を生み出す「差別化戦略」、ライバルよりも低コスト・低価格で勝負する「コスト・リーダーシップ戦略」の2種類に分かれます。

以下、IO型に合う戦略が学べる書籍を紹介します。



『競争の戦略』マイケル・ポーター/ダイヤモンド社/5,631円+税

IO型で検討すべきは、独占を目指し競争を避ける戦略。そのエッセンスが一番うまく詰まっている本書。「競合他社」「新規参入者」「サプライヤー」「顧客」「代替品」という「5つの力」(5Forces)を有名な概念として紹介。



『ゼロ・トゥ・ワン』ピーター・ティール/NHK出版/1,600円+税

著者は米ペイパル創業者。新しい何かを創造する企業をどう立ち上げるかについて書かれているが、最終的にIO型の事業モデルを目指せと指南する。起業時からIO型を意識して独占を目指す戦略を描くべきだという考えがみてとれる。



『ビジネスゲームセオリー』御立尚資、柳川範之/日本評論社/1,800円+税

経営戦略をゲーム理論で考えるための方法を説いたのが本書。IO型の競争では市場が数社による寡占状態であるため、競合他社の行動を読むことが不可欠。IO型の競争環境でこそゲーム理論は効果を発揮するといえる。

文 = 入山章栄 構成 = 岸川貴文

この記事は 「Forbes JAPAN No.10 2015年5月号(2015/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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