米国内の地域差:地理と文化が名前に与える影響
上記で紹介した、最も人気のある猫の名前ランキングは全米のデータだが、実は州によって、名前に顕著な違いがある。トラステッド・ハウスシッターズの分析で、人気の猫の名前には州によって次のような傾向あることがわかった。
・コロラド州デンバーでは、「ジュニパー(Juniper)」「メープル(Maple)」「ロッキー」という名前が特に人気で、緑豊かなロッキー山脈を思わせる、自然に着想を得た名前が好まれている
・テキサス州の住民も、地元からアイデアを得た名前を付けている。人気があるのは、「ドリー(Dolly)」「ウィリー(Willie)」(カントリー音楽の著名アーティストから)や「チリ(Chili)」(テキサス州発祥の料理チリコンカンから)といった名前だ
・大都市ニューヨークでは、「ビギー(Biggie)」(伝説的ラッパー、ノトーリアス・B.I.G.の愛称)や「ボウイ(Bowie)」(ニューヨークで長く暮らしたデヴィッド・ボウイから)、「カンノーリ(Cannoli)」(イタリアのペストリー菓子。イタリア系移民が多いため)といった、音楽や食文化の影響を受けた名前が多い
こうした地理的な好みには、地元の価値観や芸術性、さらには気候が反映される傾向があるようだ。
ポップカルチャーと「ロキ」効果
ペットの名前に最も目に見えた影響を与えているのがポップカルチャーだ。例えば、「ロキ」という名前が大人気なのは、マーベルスタジオ製作の映画や、テレビシリーズ『ロキ』でトム・ヒドルストンが演じたキャラクターの影響だ。
興味をそそられるのは、飼い主がそうした名前をつける理由は人気の高さだけではないことだ。キャラクターと自分のペットの性格が一致していると考えて名前をつける飼い主が多いのだ。猫は知ってのとおり、お高くとまっていて知的で、行動が予測できない。そうしたところがおのずと「いたずら好き」の典型に当てはまると感じられるわけだ。
また、『ライオン・キング』が公開されてから30年も経つというのに、シンバやナラという名前がいまだに人気なのは、文化的な影響が名前の流行に深く刻み込まれていることを示している。近い将来、AIを使ったメディアやストリーミング配信向けアニメシリーズに登場するキャラクターに由来する新しい名前が次々と誕生するかもしれない。そうした作品ではしばしば、ペットや主人公の相棒役の動物に、印象深い名前がつけられている。
人間は、アイデンティティを与えるだけでなく、つながりを築くために名前をつける。そのようにして、個性や愛情、想像力を表現しているのだ。ペット、とりわけ猫の名前には、飼い主の好みと、より幅広い社会的なトレンドの両方が映し出される傾向が強い。
生物学的な観点から見ると、私たちがペットにつける名前は、ある種の共進化といえるだろう。人間は猫を飼うことで、彼らの行動と生態を形成してきた。それと同じように、猫もまた、人間の言語と文化、感情的側面に影響を与えてきたのだ。
猫の名付けはシンプルに見えるかもしれないが、その裏側には、深い心理学的、社会的、さらには進化的な文脈が潜んでいる。「最も人気のある猫の名前ランキング」が示すように、人間によるペットの名付け慣習は進化を続けている──ルナ、ロキ、レオといった、一つ一つの名前を通じて。
(余談:アニコム損害保険が発表した2025年版日本の猫の名前ランキングは、1位からムギ、レオ、ルナ、ソラ、ラテとなっている)


