大量レイオフ、経済の分断、政治の不確実性と、手に負えないことばかりに思えるこの時代、ストレスレベルが上昇するのは当然だ。マインドフルネスの実践は、「いまここ」で起こっていることに意識を留めることで、平常心、明晰さ、自信を培い、仕事への集中や生産性の基礎を築く。
本稿では、最も効果的なマインドフルネス手法の1つとして「バタフライ・ハグ」を紹介しよう。自分の心を落ち着けるツールとして、その効果が科学的に実証されているものだ。
「バタフライ・ハグ」とは何か
ハーバード大学の研究によれば、ヒトの心は活動時間の47%において「集中していない」状態にあるが、こうした「心ここにあらず」な時間は代償を伴う。思考が集中を欠いている時は、「いまここ」に注意を向けている時と比べて、よりストレスを感じ、幸福度が低いのだ。
この研究によれば、人は何をしているときであれ――残業や、家の掃除機がけをしていたり、渋滞につかまっていたりするときでさえ――、活動に集中しているときの方が、ほかのことを考えているときよりも幸福であることが示されている。
マインドフルネスと、ストレスの軽減、ウェルビーイング、仕事の生産性向上、キャリアの成功の関係を裏づける科学的証拠はますます増えている。メディア企業SWNS傘下のOnepoll(ワンポール)が行った調査によれば、多くの米国人において、マインドフルネスの実践はメンタルヘルスにポジティブな効果をもたらしている。
マインドフルネスは、心を訓練して、本能的にはしないようなことをさせる手法だ。すなわち、将来の不安(「解雇されたらどうしよう?」)や、過去の後悔(「あのとき昇進できていれば」)にとらわれることなく、「いまここ」に立ち返り、その瞬間を楽しみ、生きていることに感謝するのだ。あなたも訓練次第で、リラックスしつつも注意を怠らない、マインドフルな状態になることができる。
ストレス軽減や燃え尽きの予防に利用されている
極めてシンプルでありながら、高い効果(驚異的な、と言っても過言ではない効果)を持つマインドフルネスツールの1つが、「バタフライ・ハグ」だ。1988年にルキナ・アルティガスらが開発したこの手法は、ハリケーン「ポーリーン」に襲われたメキシコのアカプルコで、生存者たちが心的外傷後ストレスに対処する手助けをすることを目的としていた。本来の目的ではないものの、今では、ストレス軽減や燃え尽きの予防のために利用されている。



