——いろいろな分野で効率化が進むと、面白味がなくなっていく面もあるのでは。
山西:そうですね。都市開発でも、僕が住んでいる東京の湾岸には、大型ショッピングセンターもコンビニもファミレスもあって、生活には何も困らない。でも、すべての地域が同じようになっていったら、どこかで考えるタイミングが来る気がします。「なんか、つまんなくね?」とみんなが思い始める。
なんで個性あるまちづくりにならなかったかというと、費用対効果が高いからだと思います。あらゆる面で効率が上がっていくなら、逆に非効率の部分にコストを投じれば、いろんなことが変わってくるかもしれないですね。
——AIで効率化して、非効率なところにあえてコストをかける。面白くなりそうな予感がします。
山西:時間や体力を削る仕事が減って、芸術のような文化的な営みが伸びていったらいいですよね。でも、減った結果、あえてやるのかもしれない。僕は業務改善ツールをいっぱい作ってるけど、自分の業務改善はしてないんです。やりたいから手を動かしてる。
人間はそんなに効率を求めてないんじゃないかな。
即席ラーメンがめちゃくちゃうまくて健康的なものになっても、人間はラーメン屋を探すと思う。今はやらないといけないことが増えすぎているから、人類が楽しそうに見えないのかもしれない。人間は曖昧で、いい加減で、矛盾を抱えていて、非効率な生きもの、ともいえます。結局、やらなくてもいいことだけをやっている状態が、いちばん楽しいんですよ。

やまにし・こうた◎電通 第7マーケティング局マーケティングコンサルティング2部統合マーケティング・プランナー、AIマスター。1995年、神戸の実家が阪神・淡路大震災で被災し、半年後に疎開先の祖父母の家で生まれる。2歳で神戸に戻り、明石工業高等専門学校の電子電気工学科、専攻科を経て、大阪大学大学院工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻へ。公共トイレは必要なのか、コンビニのトイレで代替可能なのかを研究テーマに、大阪・梅田周辺のトイレ約200カ所を一晩で回って調査する。2020年に修士課程を修了し、今度は同大学院経済学研究科で行動経済学を学び、MBAを取得。トイレの照明を夕焼けの色に変えていって長時間利用を減らす仕掛けを考案した。2021年に電通に入社。

