正解っぽいものには、あまり価値がない
——AIを使った仕事の面白さは、どんなところにあるんですか?
山西:今まで、手法が固定されたマーケティングにモヤモヤしてたんですよ。認知、興味、購入、購入意向みたいなフレームワークで単純化して、人間が理解しやすいものにしているけど、出てきた結果は本当なのかなって。
AI時代は人間だけでやらなくていいので、セオリーが全然違ってくる。より良いマーケティングの手法をゼロから考えられるのが、いちばん楽しいですね。人間の都合で型にはめたものを破っていくタイミングが今なのかなと思っています。
——仕事以外でも、カレーの話をするとか、日常的にAIと話したり、相談したりしているようですね。
山西:ダイエットのような目的、課題があるときにAIを使うことが多いですね。最近のAIは、人との会話にかなり近い音声会話ができるんです。テキスト上でのAIとのコミュニケーションとはまた違った刺激になって、はまっています。
この前、旅行のドライブ中に、「レッサーパンダはなんであんなにかわいいのか」「なぜ人間に媚びるような進化をしたのか」についてAIと40分くらい話してたら、妻に「つまらないから消して」と言われました。一人のときはもっと延々としゃべっちゃうので、時間を決めてやるようにしています。
——話し相手として、かなり魅力的な存在なんですね。
山西:人間は機嫌が悪いと話を聞いてくれないし、こちらが満足するようなことを言ってくることもありますよね。でも、AIは、迎合してほしくないと言うと、ちゃんとそうするんですよ。サボることもないし、区別や差別もしない。品質が保たれたコミュニケーションがずっとできるから、僕みたいに永遠にフラットに会話したい人にはいいんです。
——そうやって使い続けることでAIの扱い方に慣れていったんですか?
山西:使い続けていると、どんなことができるのかがわかってきます。AIは入力された内容に対して、学習したデータの中からいちばん正解の確率の高いものをどんどん紡いで回答を作っていきます。だから、平均値みたいなものが返ってくるんですよね。「とんだアイデアを出してくれ」と言ったら、とんだアイデアの中での平均値が出てくるわけです。
——簡単に正解らしきものを得られるけれども、それはあくまで平均的なものだと。
山西:そうですね。最近、インターンの講師をしていて、大学生に「ミネラルウォーターをヒットさせるアイデア」みたいな課題を出すと、回答が4パターンくらいしかないそうです。明らかに昔より幅が狭くなっている。みんながAIを使っているからです。
正解っぽいけど、平均値が出てくるから、ちょっと工夫しても、ある程度の範囲に収まるんです。そこから自分で考えている人は別ですけど、誰もが正解っぽいものにアクセスできたら、それは正解であってもあまり価値がないですよね。


