アジア

2025.10.20 16:30

トランプが救った「ベトナムの不動産王」、2300億円の豪華ゴルフリゾート建設へ

ドナルド・トランプ米大統領と息子のエリック・トランプ(Photo by Jeff J Mitchell/Getty Images)

中国への過度な依存を避ける「チャイナ・プラス・ワン」戦略の中核に位置

2010年代後半から2020年代初頭にかけて債務を整理したタムは、事業を再び軌道に乗せた。ベトナムとキンバック・シティはいま、中国への過度な依存を避けようとする製造業の「チャイナ・プラス・ワン」戦略の中核に位置している。

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「当初のきっかけは米中貿易戦争で、グローバルなサプライチェーンを1国に集中させるリスクが明らかになったことにある」と、ティエン・ヴィエト証券のクアンは指摘する。「この流れは、中国のゼロコロナ政策による深刻な操業停止で一気に加速した。フォックスコンやサムスンのような主要な組立メーカーにとって、中国以外に安定した製造拠点を確保することは、米国市場への供給を維持するための戦略的必然となった」。

中国国境に近い北部が優位、バクザンで生産拡大

キンバックが北部に工業用地を集中させていることも大きな強みだ。そこは中国南部の製造集積地に近く、その地理的優位が事業に追い風となっている。「この近さは大きな利点だ。国境を越えた長年のサプライヤーから効率的に部品を調達しつつ、最終組立をベトナムで行うことができる」とティウは説明する。

アップルのクックCEO、米国で販売されるiPadやApple Watchがベトナムで生産されていると明かす

さらに、キンバックが北部バクザン省で運営する約510万平方メートルの工業団地を例に挙げ、「フォックスコンはここに数十億ドル(数千億円)を投じ、従来は中国でしか生産されていなかったiPadやMacBookの製造を拡大している」と語った。

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アップルのティム・クックCEOは7月31日の決算説明会で、米国で販売されるMacBook、iPad、Apple Watchの大半がすでにベトナムで生産されていることを明らかにした。キンバックの主要顧客にはフォックスコンだけでなく、AirPodsなどアップル製品の部品を手がける中国企業ゴアテックとラックスシェアも含まれている。両社はまた、アップルの元チーフデザインオフィサー、ジョナサン・アイブが構想したOpenAIの新デバイス向け部品の製造も請け負うと報じられている。

ホテル・リゾート事業の見通しは複雑、資金調達の設計が成否を左右

タムが新たに手がけるホテル・リゾート事業の見通しは、やや複雑だ。彼はすでに合弁会社を通じていくつかのホテルを運営しているが、トランプブランドの15億ドル(約2250億円)規模のゴルフリゾートを完成させるには、はるかに大きな資金調達が必要になる。「このプロジェクトの成否は、キンバックがどのように資金構成を組むかに大きく左右される。おそらくパートナーシップやノンリコースローンを活用する形になるだろう」とティエン・ヴィエト証券のクアンは指摘する。

しかし、タムは懸念していない。彼にとって、トランプ・オーガニゼーションの「グローバルブランド」は、自社を高級不動産開発企業として確立させる後押しになると考えている。フォックスコンのような主要海外顧客との長年の関係、そしてトランプ一家との新たな友好関係は、競合にはない競争優位といえる。

トランプの企業グループが次々と海外案件を発表するなかで、タムは今後もトランプブランドの新プロジェクトに取り組む可能性を否定していない。「トランプ・インターナショナル・フンイエンは始まりにすぎない」と彼は語り、「今後も高級プロジェクトを開発し続け、大統領との提携にも前向きであり続ける」と付け加えた。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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