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2025.10.16 15:30

ハマスは弱体化したが打倒されていない ガザ停戦の裏にある現実

パレスチナ自治区ガザ地区中部のヌセイラート難民キャンプで2025年2月22日、イスラエル人人質の引き渡し現場に集まったイスラム組織ハマスの戦闘員(Majdi Fathi/NurPhoto via Getty Images)

パレスチナ自治区ガザ地区中部のヌセイラート難民キャンプで2025年2月22日、イスラエル人人質の引き渡し現場に集まったイスラム組織ハマスの戦闘員(Majdi Fathi/NurPhoto via Getty Images)

イスラム組織ハマスに拘束されていた最後の生存する人質20人がイスラエルに帰還し、イスラエルで服役していたパレスチナ人囚人少なくとも250人が釈放された。これはパレスチナ・イスラエル戦争の重要な節目になった。だが、米国のドナルド・トランプ大統領は「戦争は終わった」と述べたものの、深刻な問題は依然として解決されていない。

留意しておくべきなのは、今回の人質・囚人交換はあくまで停戦合意の一環であり、和平合意の一環ではないという点だ。スイスのチューリヒ工科大学安全保障研究センター(CSS)の研究者らによると、世界では1990年以降に230を超える停戦合意が成立している。しかし、多くは破綻する結果になっている。

停戦が崩壊しやすくなる、あるいは反対に持続しやくなる要因はいくつかある。停戦は、当事者のいずれかがそれを利用して再編成や再武装をする場合や、自らの部隊を完全に統制できておらず、局所的な違反や妨害者(スポイラー)による違反を招く場合に崩れることが多い。一方、動員解除や統治に関する合意をともない、しっかりした監視メカニズムが設けられている場合には、停戦が長続きする傾向にある。こうした研究結果を踏まえると、ハマスによるガザ地区の支配は今後どうなるのか、その軍事力は現状どのような状態なのか、ハマスは果たして武装解除や動員解除に応じるのか、あるいはパレスチナ人の間での支持はどう影響するのかなど、いくつも疑問が生じてくる。

2023年10月7日にイスラエルを攻撃する前、ハマスは戦闘員をおよそ3万人擁していた。英BBCは先週、ガザ住民の死者はこれまでに6万6000人超にのぼると伝えているが、イスラエル情報当局のデータベースでは、ハマスや、対イスラエルで共闘関係にあるパレスチナ・イスラム・ジハード運動(PIJ)の構成員の死者は5月時点で9000人程度にとどまっている。一方、米議会の推定では、ハマスは戦争開始後、戦闘員を新たに最大1万5000人採用したとみられている。ということはつまり、ハマスの戦闘員数は以前よりむしろ増えている可能性もある。たしかに、イスラエルはハマスの軍事部門や政治部門の幹部のほとんどを殺害しており、組織に混乱と指導部の空白を生み出している。だが、ハマスの指導部不在に関して問題になるのは、それが重要な局面で妨害者による攻撃の可能性を高めることになりはしないかという点だ。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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