淘汰の時代を生き抜く、経営陣に求められる説明力
マーケットメイカーGSRでコンテンツ&スペシャルプロジェクト部門を統括するフランク・チャパロは、経営陣による効果的な情報発信も同じくらい重要だと指摘する。「広い投資コミュニティの間では、こうした仕組み(DAT企業)への理解はいまだ発展途上にある。
多くのDAT企業にはアナリストのカバレッジがなく、ディスカウント(割安取引)は投資家の不信感を強める」と彼は語る。「だからこそ、透明性を高め、何を行っているのか、どう差別化しているのかを積極的に発信することが、投資家の信頼を支える助けになる」と彼は続けた。
アーキテクト・パートナーズのエリオット・チュンもこう同調する。「現時点では、すべてのDAT企業が明確な戦略を確立できているわけではないのは明らかだ。ただし、適切なチームを持つ企業であれば、長期的にはmNAVなどの指標でプレミアムを維持し、他を上回る成果を上げられるはずだ」
一方、自社の「ソラナ・カンパニー」を含む複数のDAT企業に累計5億ドル(約755億円)以上を投資しているパンテラ・キャピタルのゼネラルパートナーであるコスモ・ジアンは、ほとんどのデジタル資産トレジャリーは本来、他業種のスタートアップと同様に、「NAVと同水準か、それを下回って取引されるのが自然だ」と考えている。
彼によれば、投資家が企業の成長性を見極めるうえで本当に注目すべき指標は、取引ボリュームだという。「DAT企業にとって成功の鍵となるのは、基盤となるトークンへの期待をどれだけ高め、その熱量をまったく新しい層の投資家に伝えられるかだ。そう考えれば、取引量こそが最大の成果指標になる。そしてもちろん、“1株当たり保有トークン数”の伸びも重要だ」とジアンは説明する。
割安株への投資は有効か、リスク許容度が鍵を握る
では、mNAVが大幅なディスカウントを示している暗号資産トレジャリー企業の株を、投資家は買うべきなのだろうか。ビットワイズのフーガンは、「一定の時点で、こうした割安株は無視できないほど安くなる」と見ている。買収者が動くか、あるいは物言う株主が企業に解散や再編を迫る可能性もあるという。
「問題は、どれくらいの投資期間を想定しているかだ。もしこれらの資産がNAVに対して大幅なディスカウントで取引されていて、しかも負債に縛られていないのであれば、保有し続けるのは悪くない戦略だと思う。ただし、ディスカウントが拡大するリスクを受け入れる必要がある」と彼は付け加える。
「これは、かつてのGBTC(グレースケール・ビットコイントラスト)を割安で買うのに近い。10%のディスカウントで買っても、それが20%に拡大することはあり得た。それでも耐えられる覚悟が必要だ。今回のケースはETF転換への明確な道筋があるわけではないが、リスク許容度の高い投資家にとっては、原理としてはよく似ている」とフーガンは語った。
パンテラ・キャピタルのジアンは、投資家が注目すべきは「伝統的な金融投資家の思考を理解し、その言語で語り、資本市場の活用方法を把握している経営陣を持つ企業」だと考えている。
マイケル・セイラーのストラテジーが900億ドル(約13.6兆円)規模の企業へと成長する過程で活用してきた転換社債や優先株による資金調達は、企業が一定の規模に達して初めて効率的に機能する手法だと彼は指摘する。小規模企業にとっては、資本コストがあまりに高くつくからだ。
上場しているDAT企業の少なくとも半分は、今後5年以内に姿を消すだろう
「上場しているDAT企業の少なくとも半分は、今後5年以内に姿を消すだろう。買収されるか、デジタル資産の運用を誤るか、あるいは戦略を実行できないためだ」とアーキテクト・パートナーズのエリオット・チュンは語る。
「だが同時に、2034年までにはマグニフィセント・セブンを上回るパフォーマンスを見せ、誰もが知る存在となるDAT企業が15社ほど現れるとも確信している」と彼は続けた。


