暗号資産

2025.10.17 14:00

保有するビットコイン・暗号資産は22兆円、「デジタル資産トレジャリー」市場は淘汰の局面へ

Images by Yuichiro Chino/Getty Images

企業の価値を測る新指標、mNAVとは何か

暗号資産業界は、クローズドエンド型ファンドの世界で長らく純資産総額(NAV)に対する「割引率」や「プレミアム」と呼ばれてきた概念を、新たな「指標」として再定義した。この分野の企業はその価値を、時価総額と保有する暗号資産の評価額との比較で示す mNAV(market to net asset value)という指標を用いている。

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しかし、DAT企業のおよそ15%の時価総額は、保有する暗号資産の純資産総額を下回る水準となっており、mNAVが1.0を割り込んでいる。これは、企業全体の評価額が、バランスシート上のトークンの価値よりも低い状態にあることを意味している。

暗号資産データサイトのBitcoinTreasuries.NETによると、ビットコインを保有する上場企業168社のうち26社が、実質的に割安な水準で取引されている。ソラナを中心に暗号資産を保有する企業も同様の圧力にさらされており、暗号資産分析企業アルテミスのデータによれば、こうした企業のmNAVプレミアムは直近数週間で約30%下落し、2.8から2.0へと縮小した。

mNAVは暗号資産企業の株価収益率(PER)のようなものと専門家が指摘

暗号資産運用会社パラファイ・キャピタルのリサーチアナリスト、ケビン・リーは、mNAVを「暗号資産を保有する企業にとっての株価収益率(PER)のようなもの」と捉えている。これらの企業は利益に注目するのではなく、「バランスシート上の1株当たりデジタル資産を増やすことで成長している」と彼は主張している。

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イーサリアムやソラナなど「プルーフ・オブ・ステーク」型トークンを保有する企業は、ステーキング(ネットワークの安全性維持に協力するためにトークンを預け、報酬を得る仕組み)によって、自然に資産を増やすことができるため、ビットコインのみを保有する企業よりもmNAVが高くなる傾向があるという。

リーは、最近のmNAVの縮小は「暗号資産関連株の過剰供給」を反映していると指摘する。「現在は、純粋に金もうけ目的でこの分野に入ってきた“傭兵”たちがふるいにかけられている時期だ」と彼は語った。

NAVを下回って取引されることは、こうした企業にとって新たな資金を調達する際──社債の発行や増資などを通じて暗号資産を買い増す場合──に不利に働く可能性がある。

とはいえ、それが致命的というわけではない。むしろ「1ドル(約151円)の価値を80セント(約121円)で買う」ことを狙うバリュー投資家にとっては、絶好の買い場となる可能性もある。

純資産総額(NAV)割れは買い場か、過去にはストラテジーも経験

「こうした状況に驚いている人は、ストラテジーの過去を見ていないだけだ。同社の株は、2022年から2023年の多くの期間でNAVを下回って取引されていた。価格が下落したり、ボラティリティが高まったりする局面では、mNAVが圧縮するのは自然なことだ」と語るのは、暗号資産運用会社ビットワイズのCIO(最高投資責任者)マット・フーガンだ。

彼はこう続ける。「NAVを下回って取引されているからといって、優れた経営陣がステーキングやレンディング、あるいはヘッジファンドのような運用手法を通じて“1株当たりの保有コイン数”を増やせないというわけではない」

割安な状態が長く続く場合、NAVを維持する一つの方法は、保有トークンの一部を売却して自社株を買い戻すことだ。しかしそれは「企業にとっての死の宣告になりかねない」と、フーガンは警告する。

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翻訳=上田裕資

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