デビッド・ケリー氏は、商用トラック業界向け診断ソリューションと修理情報の大手プロバイダーであるDiesel LaptopsのCFOを務めている。
AIはあらゆる場所に存在し、企業の運営、エンゲージメント、成長に関する考え方を変えている。CFOとして、私はこれらのツールが効果的に使用されれば、いかに強力になり得るかを直接目の当たりにしてきた。しかし、AIは魔法のように企業の問題を解決するわけではなく、企業の実態を反映するものだ。そして、モデルに供給されるデータが混乱していれば、得られる洞察もおそらく同様に混乱したものになるだろう。
だからこそ、財務リーダーの最も重要な責任の一つは、特に「マスターデータ」と呼ばれる企業データの健全性を確保することだ。これには、顧客の詳細情報や販売履歴から価格履歴、取引記録まで、企業の運営方法を説明するあらゆる情報が含まれる。このデータを正確に把握できれば、AIはより迅速で鋭く、より収益性の高い意思決定を支援できる。逆に、データが不正確であれば、混乱を自動化するだけかもしれない。
「マスターデータ」の実際の意味
マスターデータには通常、顧客プロフィール(名前、連絡先、請求状況、過去の購入履歴など)や、製品、地域、チャネル別の販売数量などの販売情報が含まれる。また、SKU、説明、価格帯、ライフサイクルなどの製品カタログ情報や、請求書、クレジット、返品、履行段階などの取引データも含まれる。
これらはAIツールがトレンドを検出し、予測を行うために依存する生データだ。これらのデータセットを組み合わせることで、「最も収益性の高い顧客は誰か」「顧客の離脱はどこで発生しているのか、なぜ発生しているのか」「どの製品が顧客維持とリピート購入を促進しているのか」といった重要な質問に答えることができる。
CFOがマスターデータに関心を持つべき理由
歴史的に見ると、財務部門はデータ管理に関して必ずしも発言権を持っていなかった。しかし今日では、ほとんどのAIイニシアチブは、利益率の向上、予測の改善、運用効率の発見、顧客維持率の向上など、我々が関心を持つ目標に結びついている。そして、これらの目標はすべて、信頼性が高く、適切に構造化されたデータを持つことに依存している。
マスターデータは分析の基盤のようなものだ。それが不完全であったり欠陥があったりすれば、ダッシュボードも同様になる。顧客記録が古かったり、システム間で不一致があったりすれば、離脱レポートをどうやって信頼できるだろうか?販売データが財務と一致しなければ、収益予測にどれだけの自信を持てるだろうか?
CFOが取るべき実践的なステップ
CFOとして、コーディングを学んだりデータサイエンティストになったりする必要はない。必要なのは、データの準備を不可欠なものとして扱うことだ。検討すべきいくつかのアイデアを紹介する:
- 問題を重要視する。データの健全性をC層レベル、あるいは取締役会レベルの議題にする。その改善のための資金調達を提唱し、チームがその重要性について一致していることを確認する。
- 定義を標準化する。主要なステークホルダーの定義について全員が合意していることを確認する。例えば、「新規顧客」とは何か、何が離脱と見なされ、何がそうでないのかなど。マーケティング、営業、財務がそれぞれ異なるフィルターを持っていれば、レポートの整合性を取ることは不可能だ。
- 混乱を整理する。重複を排除し、システムを調整し、一貫したデータモデルを構築するための予算と時間を確保する。IT部門だけに任せて待つことはしない。
- 定期的に監査する。財務諸表をレビューするのと同様に、主要なデータセットを定期的にレビューする習慣をつける。住所が欠けていないか?製品名が地域によって異なっていないか?非アクティブなアカウントがまだアクティブとしてフラグ付けされていないか?
- 取り組みを成果に結びつける。販売データを整理して、突然より明確な購買パターンやより効果的なキャンペーンが見えるようになれば、それを文書化する。ROIを示す。
AIは意思決定者を強化する
AIは私たちの代わりに意思決定をするためにあるのではなく、より賢明な意思決定を支援するためにある。そして、それが学習する情報が現実を反映している場合にのみ、その役割を果たすことができる。CFOとして、私たちは不正確さの波及効果と、誤った入力がどのように高価なミスにつながるかを理解している。だからこそ、データのクリーンアップを他人の仕事として扱うことはできない。
AIの導入は戦略から始まり、規律によって成功する。そしてその規律は、自社の体制を整えることから始まる。財務リーダーはこの取り組みを主導するのに最適な立場にある—なぜなら、データが正確であれば、意思決定はより良くなるからだ。



