政治

2025.10.16 12:00

中国の「一帯一路」構想は「トロイの木馬」なのか? 静かに広がる安全上の脅威

中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)によって建設中のペルーのチャンカイ港。2024年10月02日撮影(Rommel Gonzalez/Getty Images)

2000~21年にかけて、中国は海外開発プロジェクトに推定で1兆5000億ドル(約227兆円)もの資金を投じてきた。うち85%は供与ではなく融資であり、これにより中国は新興市場に対する世界最大の債権国となった。これとは対照的に、米国の対外支援総額は平均して連邦予算の約1%にとどまっている(特にトランプ現政権下で大幅に削減された)。

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これにより、中国は唯一の選択肢として自らを位置付けることができるようになったのだ。米州開発銀行(IDB)は、中南米諸国の社会基盤不足が2030年までに年間約1800億ドル(約27兆円)と膨大な規模に達すると試算している。米シンクタンク、ヘリテージ財団のマイケル・カニンガムは昨年、「米政府が(中南米諸国に)より良い選択肢を与えたわけではない。同地域の社会基盤需要は、まさに絶好の機会となっている」と指摘した。

軍事・安全保障上でも存在感を増す中国

貿易は物語の一部に過ぎない。中国は中南米地域で軍事・安全保障上の存在感も拡大している。中国は現在、アルゼンチン、ベネズエラ、ボリビア、チリ、ブラジルを含む中南米諸国で少なくとも8カ所の地上基地を運営または共同管理している。これらの基地は中国人民解放軍に世界規模の遠隔測定データとリアルタイム空間データを提供している。

習主席が2022年に提唱したグローバル・セキュリティー・イニシアチブ(GSI)の下で、中国政府はパナマからエクアドルに至る警察組織に戦術装備や顔認証システムを供給している。中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が構築した「セーフシティー」ネットワークは現在、中南米の35以上の自治体で導入されており、数千台のカメラと緊急センターが中国管理下のソフトウエアに統合されている。

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一帯一路でも民生と軍事の区別が曖昧になりつつある。アルゼンチン・ネウケン州の無線局「エスパシオ・レハノ」は既に中国の極超音速技術と衛星追跡能力を支えており、ペルーのチャンカイ港は将来、中国海軍の後方支援の拠点となる可能性がある。

中国人民元の台頭

これらの背景には、中国人民元が外貨準備資産や決済通貨として台頭している事実がある。国際決済銀行(BIS)によると、人民元は現在、世界の取引の8.5%を占めており、英ポンドの10.2%に迫る勢いだ。米ドルは依然として圧倒的な主導権を握っており、全取引の9割近くを占めている。しかし、人民元は目覚ましい進展を遂げており、2013年以降、世界の全取引に占める割合を4倍に拡大している。

英経済誌エコノミストは、習主席が「歴史的な好機を捉えた」と表現した。中国が一帯一路の参加国に対して人民元建ての取引を推進している一方で、米国は財政赤字と政治的行き詰まりによってドルへの信頼を揺るがしている。

南半球での確固たる基盤の構築

言うまでもなく、中国の戦略は単なる社会基盤整備計画をはるかに超えたものだ。同国は一帯一路をトロイの木馬として、南半球に確固たる足場を築こうとしている。

中国政府は先週、半導体や防衛技術に不可欠な重要鉱物であるレアアース(希土類)の輸出規制を強化すると発表した。これを受け、米国のドナルド・トランプ大統領は中国に対し、新たな関税を課すと脅した。一方、中国人民銀行(中央銀行)は11カ月連続で金を購入し、ドル離れを推進するとともに、米国による制裁や通貨危機から自国経済を隔離する動きを進めている。

これらの動きを総合すると、中国の帝国主義的野心が明らかになる。同国が建設する港や電力網、鉄道網から成るネットワークは単に物資を運ぶだけでなく、影響力を行使するために設計されているのだ。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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