北米

2025.10.19 16:30

米ニューヨークで進む「巨大カジノリゾート」建設構想──MGMが免許の申請を撤回

MGMリゾーツ・インターナショナルが所有するエンパイア・シティ(Andrew Zarivny / Shutterstock.com)

MGMリゾーツ・インターナショナルが所有するエンパイア・シティ(Andrew Zarivny / Shutterstock.com)

:本稿は当初、米国時間10月12日に掲載していた。その後、10月15日にMGMがニューヨーク州ゲーミング委員会に提出していたカジノ免許の申請を撤回し取り下げた。MGMは声明において、当初は30年リースを見込んでいたが15年リースにとどまると判明したため、申請を支えていた「経済的前提」が変化したと述べた)

3陣営が3つの免許を争う最終局面、12月1日選定へ

ここ3年間、ウィン・リゾーツ、ラスベガス・サンズ、シーザーズといった世界最大級のカジノ企業が、ニューヨーク市初のカジノの免許をめぐって激しい競争を繰り広げてきた。免許枠は3つあり、現在は3つのデベロッパーが、今後10年間で数十億ドル(数千億円)規模の収益を見込む巨大プロジェクトを提案している。

ニューヨーク州のゲーミング委員会は12月1日までに選定を終え、年末までに免許を付与する見通しだ。競争が最終局面に入るなか、政治関係者や業界関係者の多くは、すでにマンハッタン近郊で営業している2つの「レーシノ」と呼ばれる競馬場併設型カジノが圧倒的に有利だとみていた。これらの施設は、長年にわたって州の歳入に貢献してきたためだ。

その1つは、地下鉄でアクセスできるクイーンズ区ジャマイカにある「リゾーツ・ワールド・ニューヨーク」でビリオネアのリム・コック・タイ率いるリゾーツ・ワールド・ゲンティンが所有している。

もう1つは、ヨンカーズにあるMGMの「エンパイア・シティ・レシーノ」だ(10月15日、MGMは申請を撤回。以下MGMに関する情報は撤回前の計画に基づく)。

両施設とも競馬場とビデオスロットマシンを運営しているが、現在のところブラックジャックやルーレットといったテーブルゲームは提供していない。これらの施設は、ただちにフル装備のラスベガス式カジノに転換できる体制にあるものの、もしカジノの免許を得られなければ事業そのものが打撃を受けることになる。

残る2件の提案のうち、1つは「バリーズ・ブロンクス」で、最近までドナルド・トランプが所有していたフェリーポイントのゴルフコース「トランプ・リンクス」の隣に建設される計画だ。バリーズは2023年、トランプ・オーガニゼーションからこの土地のリース権を6000万ドル(約90億円。1ドル=150円)で取得し、「バリーズ・リンクス」に名称を変更した。もしバリーズが3件のうち1件の免許を獲得すれば、トランプはさらに1億1500万ドル(約173億円)を受け取る契約になっている。

最後の提案は、ニューヨーク・メッツのオーナーでビリオネアのスティーブ・コーエンがハードロック・カジノと組んで、クイーンズのシティ・フィールドの隣に建設を計画している「メトロポリタン・パーク」と呼ばれる施設だ。

ニューヨーク州ゲーミング委員会のブライアン・オドワイヤー委員長は、ここ数年の間、繰り返し「特定の有力候補はいない」と強調し、すべての提案を平等に審査していると述べている。9月下旬に開かれた州ゲーミング委員会の会合でも、オドワイヤーは改めて「どの候補にも優位性はない」と強調した。

「これまでも述べてきたように、これはまっさらな状態からの検討だ。いわゆる有力候補や本命というものは存在しない。残念なことに、すでにメディアの一部では『誰が支持されているか、されていないか』といった報道が出ているが、私たち委員会の使命は、最終的に免許を付与する相手が、運営能力と高い倫理性の両方を備えていると確信できるかどうかを見極めることにある」とオドワイヤーは語った。

最終判断は公共の利益が基準、委員会は免許ゼロも選択肢

またオドワイヤーは、委員会には最大3件の免許を発行する権限があるものの、必ずしも発行しなければならないわけではないと述べて、プロジェクトが「公共の利益に資する」と判断できない場合には免許を付与しない可能性もあると付け加えた。

マッコーリーのアナリストで、カジノ・ホスピタリティ業界を担当するチャド・ベイノンは、ニューヨーク州のカジノ免許を手にすることは「全米でも最も裕福な人口を抱える巨大市場に参入することを意味し、全米で最も成功するカジノになり得る」と指摘する。

「ニューヨークほど有望な市場は、今後しばらく現れないだろう」とベイノンはフォーブスに語った。

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翻訳=上田裕資

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