北米

2025.10.19 16:30

米ニューヨークで進む「巨大カジノリゾート」建設構想──MGMが免許の申請を撤回

メトロポリタン・パークは約1.2兆規模の開発計画、地域基金約245億円

メッツのオーナーでビリオネアのスティーブ・コーエンは、ハードロック・インターナショナルと組み、クイーンズ区フラッシングにあるシティ・フィールド隣接の駐車場を再開発し、カジノ、ホテル、コンベンションセンター、エンターテインメント施設、そして約10万平方メートルの新たな公園空間を整備する、総額81億ドル(約1.2兆円)規模の開発計画を提案している。

この「メトロポリタン・パーク」と呼ばれるプロジェクトが承認されれば、開発面積は約31万6000平方メートルに及ぶ。フラッシング・メドウズ・コロナ・パーク(全米オープン会場のビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニス・センターがある)と、シティ・フィールド、さらにフラッシング湾を一体的につなぐ構想だ。計画には、ニューヨーク・シティFCの将来の本拠地となるスタジアムや、手頃な価格の住宅開発、公共交通の改善、さらに1億6300万ドル(約245億円)の地域基金の設立などが含まれ、クイーンズに総額10億ドル(約1500億円)規模の恩恵をもたらすとされている。

メトロポリタン・パークには、スロットマシン5000台、ディーラー付きテーブルゲーム375台、ポーカーテーブル30台、約1670平方メートルのスポーツブック(スポーツ賭博エリア)が設けられる予定で、開業3年目には年間39億ドル(約5850億円)の収益と8億5000万ドル(約1275億円)の税収を見込む。「このプロセスを前進させ、メトロポリタン・パークの“地域重視”のビジョンを実現に近づける機会を得られたことに感謝している」と、プロジェクトの広報担当カール・リケットは語った。

また、フロリダ州のセミノール族が所有し、米国・カナダ・メキシコで計19のカジノを運営するハードロック・インターナショナルの会長ジム・アレンは、地域諮問委員会がメトロポリタン・パークを全会一致で承認したことについて「真の名誉だ」と述べた。「私たちは、次の段階に向けて地域とともに前進できることに深く感謝している」とアレンは語った。

リゾーツ・ワールドは、約8400億円を投じ統合型リゾートへと刷新する計画

リゾーツ・ワールド・ニューヨーク・シティは、クイーンズ区ジャマイカの名門競馬場アクアダクトに位置する施設で、全米でも有数の高収益カジノとして知られている。現在は競馬に加え、ビデオスロットとビデオテーブルゲームのみを備える形態だが、2024年にはゲーミング機器から6億9200万ドル(約1038億円)、ナッソー・ダウンズの場外馬券端末から2億8400万ドル(約426億円)の収益を上げた。

同施設を所有するのは、マレーシアのビリオネア、リム・コック・タイ率いるゲンティン・グループだ。リゾーツ・ワールドは、現在の施設を総額56億ドル(約8400億円)を投じた統合型リゾートへと刷新する計画を提案している。計画では、約4万6500平方メートルのカジノフロアに6000台のスロットマシンと800台のテーブルゲームを設置し、さらに2000室のホテル、7000席のエンターテインメント会場、コンベンションセンター、レストラン、スパなどを備える構想だ。ベガス式のこの新カジノは、年間22億ドル(約3300億円)の収益を見込んでいる。このプロジェクトには、クイーンズ出身のヒップホップアーティスト、Nas(ナズ)も支援者として名を連ねている。

ニューヨーク州は、ゲンティンの米国事業の中核を担ってきた。リゾーツ・ワールド・ニューヨーク・シティは2011年に開業し、2018年にはニューヨーク市から北へ約2時間のモンティチェロに、総工費12億ドル(約1800億円)の「リゾーツ・ワールド・キャッツキルズ」を開業。さらに2021年には、ラスベガス史上最も高額なリゾート開発と呼ばれた総工費43億ドル(約6450億円)の「リゾーツ・ワールド・ラスベガス」をオープンさせた。

そして今、問われているのは、この新たな賭けが実を結ぶかどうかだ。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事


advertisement