北米

2025.10.19 16:30

米ニューヨークで進む「巨大カジノリゾート」建設構想──MGMが免許の申請を撤回

マンハッタン案は地域反対で失速、地元承認が壁

カジノ業界の大手各社は、今年初めまで「すべてのカジノのライセンスの中でも最も価値が高い」と見なされていたマンハッタンでの建設計画を競い合っていた。しかし、これらのプロジェクトはいずれも最初の関門である「地域の支持」を得られなかった。州のゲーミング委員会が審査を行う前に、地元の承認がなければ計画を進めることはできなかったのだ。

それら脱落組には、マンハッタンのハドソンヤードの開発を手がけたリレイテッド・カンパニーズも含まれていた。同社はウィン・リゾーツと組み、マンハッタン西側のジャビッツ・センター近くにカジノを建設する計画を立てていたが、地域のリーダーや地元政治家による「長年にわたる根強い反対」に直面し、今年5月に撤退を表明した。

商業不動産大手のSLグリーン・リアルティ、ジェイ・Z率いるロック・ネイション、そしてシーザーズ・エンターテインメントも、タイムズスクエアの中心部に「シーザーズ・パレス」を誘致しようとしたが、こちらも9月に州の諮問委員会によって却下された。ブロードウェイの劇場主やプロデューサーで構成される業界団体「ブロードウェイ・リーグ」が主導した強硬な反対運動が決定打となった。

また、マンハッタン東側の国連本部近くで計画されていた「フリーダム・プラザ」と呼ばれるプロジェクトも、先月却下された。計画地の約2万4000平方メートルの未開発地を所有するのは、故シェルドン・ソローの息子で不動産投資家のステファン・ソロビエフだ。彼はネイティブ・アメリカン系のゲーミング企業モヒガンと組み、35億ドル(約5250億円)規模のプロジェクトを構想していた。この計画には、1000室のホテルや2棟の住宅タワー、観覧車、サッカー場、さらに自らの個人コレクションに含まれるベルリンの壁の実物を展示する「民主主義博物館」も含まれていた。

ブルックリンで唯一のカジノ計画だった総額30億ドル(約4500億円)規模のプロジェクトの「ザ・コーニー」も、先月末にコニーアイランドの地域住民によって却下された。この計画には、同地出身の不動産開発業者ジョー・シットが創業したソー・エクイティーズや不動産会社であり州北部にレシーノを所有するサラトガ・カジノ・ホールディングス、ネイティブ・アメリカンのチカソー族、さらにニューヨーク・ヤンキースとダラス・カウボーイズが共同出資するレジェンズが参加していた。

一方、ラスベガスのカジノ「ヴェネチアン」と「パラッツォ」を2021年にアポロ・マネジメントへ62億5000万ドル(約9375億円)で売却し、現在は米国内に拠点を持たないラスベガス・サンズも、ロングアイランドのナッソー・コロシアム跡地で数十億ドル(数千億円)規模の開発計画を提案し、「米国市場への帰還」を掲げていた。しかし同社は今年4月、この入札プロセスから撤退している。

撤退が相次ぎ、残るは資金力ある3陣営

その結果、州のゲーミング委員会が免許の判断を下すまで残り数週間となった今、残ったのは、資金力を誇る3組のプレーヤーのみとなっている。

次ページ > バリーズは約6000億円投資を提案、カジノと統合型リゾートを建設

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事


advertisement