経済・社会

2025.10.16 17:15

頻発するカンボジアでの韓国人「拉致・監禁」事件にどう対処するのか?

Tinnakorn / Adobe Stock

韓国国内では、メディア報道や被害者や国会議員の発言により、急増した今年の被害報告数「330件」などの数字が注目を集めているが、具体的な内容(拉致なのか監禁なのか、暴行・拷問の具体性、死亡事案の確定性等)については未確認の部分も多い。またフェイクニュースの拡散や恐怖感の醸成も無視できない。とにかく正確な実態把握が困難であり、これはメディア報道や政府、双方に責任がある。

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なぜ、このように事態が短期間でこれほど拡大したのか。以下の要因が重なっているとみられる。

まず、オンライン詐欺産業の肥大化だ。コロナ禍以降、国境を越えたサイバー詐欺やボイスフィッシング、オンライン求人詐欺などが、アジア全域で増加しており、カンボジアはこうした詐欺拠点としてのインフラが完備してしまっているという指摘がある。 

韓国国内では若年層の就職難や将来への不安が根深く、「高収入求人」の魅力はとても強い。SNSなどを通じて一見すると「安全そう、儲かりそう」な求人広告が広まりやすい環境にある。

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カンボジア国内での監視や摘発の遅れ、警察及び行政の腐敗や対応の遅さ、国境を越える犯罪組織の摘発に関する国際協力の不足なども背景としてある。

また求人広告が真実かどうかを検証する情報が乏しく、渡航前のリスク評価も不十分。被害者は現地に到着して状況が悪いと知っても逃げ出せない、あるいは逃げても助けを得られにくい。言語の壁や法制度の unfamiliarity (不案内)もその一因といえる。

カンボジアでの韓国人拉致・監禁や詐欺事件の急増は、単なる「海外での珍しい犯罪」を超えて、国境を越える組織犯罪や人身売買、オンライン詐欺産業の拡大という現代的な脅威を象徴している。この問題は被害者の命や心身に直接関わる重大事であると同時に、韓国政府の国際的信頼や外交政策、国民の安全保障意識を問うものとなっている。

日本においても、この状況は他人事ではない。類似の詐欺手口や求人誘導のリスクはどの国でも起こり得るからだ。海外就職や高収入を謳う求人広告に対する警戒、情報チェックの重要性、外国での安全保障体制の理解と準備が、これまで以上に必要となってきているのだ。

文=アン・ヨンヒ

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