経済・社会

2025.10.16 17:15

頻発するカンボジアでの韓国人「拉致・監禁」事件にどう対処するのか?

Tinnakorn / Adobe Stock

国内に犯罪施設が53カ所も存在!?

カンボジアの犯罪団体の就職詐欺や拉致・監禁問題は、すでに国際的に批判されている対象だ。人権団体であるアムネスティは、6月にカンボジア犯罪団体の人身売買、拷問、強制労働などを告発する内容の報告書を提出している。報告書によれば、カンボジアには組織的に詐欺を行う犯罪施設が最低53カ所もあるという。

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また、国際アムネスティは、カンボジア政府が犯罪団体の人権侵害を認知しながらも適切に対処しないばかりか、現地警察が犯罪団体と結託して、拉致や監禁を黙認していると報告している。

このような国際的な批判や韓国政府からの圧力に応じて、カンボジアではスキャムセンターなどを対象とした一連の取り締まりが行われている。2025年6月以降、オンライン詐欺センターを捜索し、逮捕する案件が多数報じられている。 

しかし、これらの根本的な解決を困難にしている要因が複数ある。

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被害者は恐怖、現地語・法制度の壁、家族への報告の遅れなどから、被害を外部に訴えることが困難になっているというのだ。自分がどこで囚われているかわからない、電話による通話も制限されているなど、情報が錯綜している。

カンボジア側では、警察や検察などが十分に対応できていない、あるいは捜査が遅れたり、見て見ぬふりをされていたりする疑いもある。加えて国際的な犯罪組織を追ううえでの越境犯罪や言語、証拠収集などの障壁が大きい。

韓国政府は、外務省や在カンボジア大使館などを通じて被害者に対する救援をするといっているが、いまのところ被害者の物理的救出の多くをカンボジア在住の民間人が行っており、被害の実態把握もできていない現政権への批判が出始めている。

そこで、韓国外交部は、カンボジア就職詐欺被害と関連し、警察庁、法務部、国家情報院など、関連省庁の当局者をあつめた政府合同対応チームを構成し、直接プノンペンへ赴いた。これとは別にパク・イル元レバノン大使をチーム長とするタスクフォース(TF)を組んで被害者救出支援をすることにした。

次ページ > 国境を越える組織犯罪や人身売買、オンライン詐欺産業の拡大という現代的な脅威を象徴する事件

文=アン・ヨンヒ

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