経営・戦略

2025.10.16 09:15

CEO導入企業が1.7倍に急増した理由 迅速な意思決定とガバナンス

Getty Images

Getty Images

いつのころからか、トップを代表取締役社長ではなくCEOと呼ぶ企業が増えたように感じる。事実、帝国データバンクの調べでは、2019年と比較して、CEO制度を導入する企業は2024年時点で1.7倍に増えているという。CEOには、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツのような「できる」経営者のイメージがあるが、ただ雰囲気だけの話ではないようだ。

帝国データバンクは、同社が保有する企業データを分析したところ、2024年時点では少なくとも1536社がCEOを導入していた。調査対象の27万社からみると1パーセントに満たないが、確実に増加傾向にある。 

また、若い経営者ほどCEOを好む傾向も見られる。CEOを名乗る経営者は40〜60代が中心なのに対して、代表取締役社長は50〜70代が大半を占めている。とくに40代以下の差が顕著で、30代でCEOを名乗る経営者が10パーセントなのに対して、代表取締役社長は2.7パーセントだ。若い人ほどCEOを好み、したがって今後その比率はますます大きくなることが見込まれる。

日本の会社法には、株式会社には取締役会を設け、会社の責任者となる代表取締役を置くという決まりがある。「社長」には法的な規定はなく、あくまで企業内部の役職名に過ぎないことはご承知のとおり。CEO(最高経営責任者)にも法的に定められた役職ではない。なので代表取締役は、社長と名乗るのもCEOと名乗るのも自由ということになる。では、社長とCEOはどう違うのだろうか。

外資系企業やグローバル企業には、アジア太平洋地域プレジデントや消費者部門プレジデントというように、プレジデントがたくさんいる。しかしCEOは1人だ。とくに日本の代表取締役は法的な代表者として取締役会の決議にもとづいて業務を行うのに対して、CEOは経営に直接関わり、積極的に意思決定を行うという点で異なる。法律で決められているわけではないので、あくまでイメージだが。

帝国データバンクは、グローバルな展開を目指す企業が海外の慣例に合わせてCEOを導入する場合もあれば、コーポレートガバナンスを重視する投資家に対応して、「高い透明性の確保や、迅速な意思決定による企業運営を実現するため」に導入する場合があると指摘している。単なる雰囲気ではなく、それなりの必要があってCEOを名乗るというわけだ。こうした動きが広がっているという。社長室でゴルフのパターを練習するお気楽な社長さんは、もはや昭和の遺物だ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事