北米

2025.10.17 17:00

トランプと米国右派が「ジョージ・ソロスへの陰謀論」を拡散し続ける理由

ジョージ・ソロス(Photo by Popow/ullstein bild via Getty Images)

陰謀論の起源、反ユダヤ的なトロープとの関連性

ソロスに対する広範な批判や反ユダヤ的な主張が表面化したのは、彼のヘッジファンド「クォンタム・ファンド」が英ポンドやアジア通貨の空売りを仕掛けた1990年代のことだ。マレーシアのマハティール・モハマド首相(当時)は、ソロスが意図的にマレーシアの通貨リンギットの価値を下げたとし、「通貨暴落を引き起こしたのはユダヤ人であり、偶然にもソロスもユダヤ人だ」と発言。マハティール首相は、ユダヤ人による陰謀がマレーシア経済を混乱させていると根拠なく主張した。

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1992年には、ハンガリーの与党が、ソ連崩壊後の国内経済成長を抑え込もうとする「ユダヤ人主導の取り組み」をソロスが主導していると主張。当時の有力政治家の1人は、ソロスを「エルサレムの操り人形」と呼んだ。

こうした状況について、ユダヤ人の権利保護団体である名誉毀損防止同盟(ADL)は、ソロスはOSFの活動を拡大する中で、リベラルな活動に反発する右派勢力の攻撃対象になったと指摘している。アメリカ・ユダヤ人委員会(AJC)も、ソロスが「ユダヤ人による支配・富・権力」の象徴として描かれてきたとしている。その慈善活動や政治的信念への批判が、「パペットマスター(黒幕)」理論を含む、根拠のない古典的な反ユダヤ主義のステレオタイプを助長していったと分析している。

「黒幕」という表現、保守系論客が拡散させる陰謀論

米国の右派系論客たちは、ソロスがブッシュ政権に反対し、その後バラク・オバマの選挙運動を資金面で支援したことをきっかけに、彼が民主党政治を操っていると根拠のなく非難し始めた。2010年以降は、複数の保守系コメンテーターがソロスを標的にしてきた。FOXニュースのグレン・ベックは、ソロスを「パペットマスター(puppet master。操り人形の黒幕)」と呼び、ビル・オライリーは「常軌を逸した危険な過激主義者」と評した。ラッシュ・リンボーは、オバマ政権下でソロスが「操り人形の糸を引いている」と形容した。こうした「パペットマスター」系の表現は、反ユダヤ的トロープとして繰り返し指摘されている。

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陰謀論者として知られるインフォウォーズの司会者アレックス・ジョーンズは、ソロスを「悪そのもの」と中傷し、「ユダヤ・マフィア」を率いて米国政府の転覆を企てていると根拠なく主張した。これら論客による攻撃は、広く「反ユダヤ主義的」なものとして批判されている。

「ソロスはナチスと協力していた」という、根拠のない悪質な陰謀論

2018年、SNS上で「ソロスはナチスと協力していた」という根拠のない陰謀論が拡散した。第二次世界大戦中、ソロスの家族はナチスによるハンガリー占領とホロコーストを生き延びたにもかかわらず、この説は急速に広まった。拡散のきっかけとなったのは、複数の陰謀論をSNS上で発信していた女優ロザンヌ・バーの投稿だった。彼女は「ジョージ・ソロスはナチスであり、他のユダヤ人をドイツの強制収容所で殺すために密告し、その財産を奪った」と書き込んだ。この投稿はドナルド・トランプ・ジュニアによってシェアされ、のちに彼は「反ユダヤ的なものを共有する意図はなかった」と弁明した。

アレックス・ジョーンズもバーの主張を支持し、ソロスが1998年のインタビューでナチスとの協力を認めたと歪曲して主張した。だがCBSの番組『60ミニッツ』で、ソロスは少年時代にナチス支配下のハンガリーで経験した出来事について「途方もない悪、きわめて個人的な悪の体験だった」と述べており、ナチスへの協力を認めたわけではない。

米財務長官スコット・ベッセントは、ソロス率いるクォンタム・ファンドが英ポンドの空売りを仕掛けた当時、ソロスの下で働いていたと報じられている。当時ソロスの顧問を務めていたデービッド・スミックはNYTに対し、「ベッセントは当時、金融市場の多くの関係者には見えていなかった脆弱性を見抜いていた」と語っている。

投資家ソロス、その経歴と約1兆円の資産

フォーブスは2011年、ソロスを推定資産220億ドル(約3.3兆円)で世界で7番目に裕福な人物にランク付けした。これは彼が初めて「世界の富豪のトップ10入り」を果たした年だった。その後、彼は2017年に自身の資産の大半をOSFに移したことで順位を下げ、現在は推定資産75億ドル(約1.1兆円)で世界483位にランクインしている。

OSFによると1930年にハンガリーで生まれたソロスは、1947年にブダペストを離れてロンドンへ渡り、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで学ぶかたわら、鉄道駅の荷物運搬人やウェイターとして働きながら学費を稼いだ。1956年に米国へ移住したのち、ニューヨークでトレーダーとして働き、1970年には後にクォンタム・ファンドと呼ばれることになるヘッジファンドを共同設立。1999年までの平均年間リターンは32%に達したとされる。クォンタム・ファンドは2011年にソロス一族の資産を運用するファミリーオフィスへと転換された。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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