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2025.10.18 13:00

生産性レースに勝つのは「ウサギではなくカメ」 今あえて仕事のペースを緩めるべき理由

Shutterstock.com

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速いペースで仕事をする人の方が、時間をかけてゆっくり仕事をする人よりも生産性が高く、優秀だというのが一般的な見方だ。スピードは効率と勘違いされることが多いが、スピードと生産性は同じものではない。速いペースの労働者と遅いペースの労働者では、どちらが生産性における競争に勝つのだろうか。速くて激しい方なのか、それとも遅くて確実な方なのか。どちらがゴールテープを切るか、あなたは驚くかもしれない。

ペースを落として得られるもの

世界的な生活ペースの加速は、組織における労働時間の増加や時間の制約、仕事の激化につながっており、従業員の心身の健康に影響を及ぼしている。具体例として、米国の企業が「996勤務」を採用し、生産性のために疲弊を美化していることが挙げられる。

月曜から土曜までの週6日、午前9時から午後9時まで働くという週72時間労働は、米国の人工知能(AI)スタートアップがライバルの中国企業を出し抜き、「AI競争に勝とう」とする試みだ。だが最近のレポートによると、仕事の未来はたくさん働くのではなく、今よりも少ない労働にあるかもしれず、996勤務は生産性を上げるどころか実際には損なう可能性がある。

研究によると、生産性の高い従業員は、私たちの多くが考えているほどハードに、あるいは速いスピードで働いているわけではなく、仕事のペースを落とすことには明確な利点があることが明らかになった。米経営学誌『ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載された記事では、ペースを落とすことで、ペースの速い同僚よりも優位に立てるというパラドックスが明らかにされている。記事の著者らは、組織が収益を増やしたいのであればペースを落としてみるべきだと提案している。

企業343社を対象とした調査では、優位に立とうと性急に取り組みを進めた企業は、重要な場面で一旦止まって方向性の正しさを確認した企業よりも、売上高と営業利益が低かった。さらに「スピードアップのためにペースを落とした」企業は3年間で売上高が平均40%、営業利益が同52%増え、収益を押し上げた。

他の科学的研究でも、仕事のペースは持続可能でなければならないという結論に至っている。ゆっくりとした働き方は個人のリズムと組織の目標とのバランスを尊重し、双方の持続可能性を優先する。タイトな期限やプロジェクト完了のプレッシャーにさらされているときは、数値化できない定性目標や考える時間、個人の回復、目的、仕事をより人間的なものにすることなどを念頭に置くことが重要であり、それにはスローペースが必要だ。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事の著者らによると、単に生産ペースを上げるだけでは、やがて価値が低下することが多いという。「戦略的スピードで取り組んでいる業績の高い企業は、アライメント(組織の目的・価値観・行動などが一体となっている状態)を優先していた」と著者らは説明する。「そうした企業はアイデアや議論に対してよりオープンになり、革新的な思考を奨励した。そして、振り返りや学びのための時間を確保した。対照的に、常に速く動き、効率を最大化することにあまりに集中し、試行された方法に固執し、従業員のコラボを促進せず、アライメントにさほどこだわらない企業では業績が悪化した」

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翻訳=溝口慈子

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