キャリア

2025.10.18 13:00

生産性レースに勝つのは「ウサギではなくカメ」 今あえて仕事のペースを緩めるべき理由

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現代に通じる寓話

寓話「ウサギとカメ」は現在でも真を突いている。私は以前、速い生産を達成や成功と同じものとみなしていた。自身の仕事でも実践したりした。私はその経験から苦労して学んだ。イソップは正しかったのだ。ウサギがプロジェクトを完成させるため、あるいは締め切りに間に合わせるためにどんなに懸命に、そして速く取り組んでも、カメが先にゴールするのだ。そして科学は私の味方だ。必死になって急ぐのではなく、のんびり歩いた方が早くゴールにたどり着ける。ペースを落とすことにはメリットがあることが、研究で示されている。

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ゆっくり時間をかけて歩く人は趣味を楽しみ、予期せぬ人生の出来事にうまく適応し、全体として楽観的な傾向がある。また、毎日昼寝をしがちで、健康意識が高く、心身の不調が少なく、キャリアも長い。

職場にいるウサギたちは、時計に向かってわめき散らし、天に向かって拳を振り上げ、時間の制約と闘っている。急ピッチで仕事を進めると自分を取り巻く環境が見えなくなり、ワークライフバランスという視点を失う。自分の限界を認識せず、忍耐力を超えて自分を駆り立て、自らに課したプレッシャーの中で自分を追い込んでしまう。駆け足の人たちはプレッシャーのもとで目標に向かって前進するが、何事も十分に速く進まず、常に時間に追われている感覚を持ち続けているとやがて追いつめられる。

皮肉なことに、速いペースはミスや事故を誘発し、生産性を低下させる。そこにアドレナリンを分泌させる要素が加わると、二重の問題を抱える。走りながらファーストフードを詰め込んだり、レッドブルやスターバックスの飲み物を一気飲みしたりすると、さらに心身の健康を損なうことになる。

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ペースの速い人は、1日の中でセルフケアや趣味のために割く時間は十分あると感じない傾向にある。胃酸過多や頭痛、筋肉の凝り、高血圧、気分などを改善するもののCMの数を考えてほしい。絶え間なく忙しくし、急いでいることにより、体内で生成されるストレスホルモンはスピードのように作用し、あなたの感情は昂り、落ち着かなくなる。また、興奮しやすくなり、休憩時間にリラックスできなくなるという研究結果もある。

その結果、体がうまく機能しなくなってしまう。ストレス度合いを示すダッシュボードの針を、チェックしないのと同じことだ。2025年には労働人口の66%が2型糖尿病やその他のストレス関連の疾患を抱えつつ、バーンアウト(燃え尽き症候群)のような大きな不調を経験すると言われている。仕事に対する熱意や業績、職場の人間関係も水の泡と化す。

仕事後のリラックスも、おざなりになっている。新しい調査によると、ほとんどの従業員が自由時間を仕事から回復するために使っているという。書籍の要約アプリのHeadway(ヘッドウェイ)が労働者2000人を対象に行った調査によると、60%の人が自由時間に人生を楽しむのではなく、ぐったりしていたり、仕事の疲れからの回復にあてていると答えている。この調査では、4人に1人が趣味の追求といった単純なことをすることに罪悪感を感じており、同じく4分の1がもはや仕事以外のところで自分というものがないように感じていると答えている。

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翻訳=溝口慈子

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