各国がロシアの国有資産の差し押さえと転用を検討する中、複数の市民団体がEUに対し、凍結資産の一部をロシアによる人権侵害の被害者への賠償に充てるよう要請している。ウクライナ侵攻に伴う性的暴力や拉致、拷問などの重大な人権侵害の被害者らは、侵攻開始から3年以上が経過した今もなお、正義の実現を待ち続けている。正義とは、刑事責任の追及に向けた努力だけを指すものではない。賠償請求は国際法上、被害者に認められた権利だ。被害者が生活を再建できるよう、賠償金が確実に支払われる最善の方法を探ることが極めて重要だ。
各種市民団体は共同声明で、「凍結されたロシアの国有資産を担保とした1400億ユーロのウクライナ向け融資が検討されている中、EUはこの資産を活用して新たな手法を模索し、資金の一部を重大な人権侵害や人道法違反の被害者支援に充てるべきだ」と要求。「この賠償金のわずか2%に当たる28億ユーロ(約4900億円)を国内賠償計画に充てるだけで、人々の生活は一変するだろう。この大胆な一歩は欧州の指導力と法の支配への確固たる姿勢を示し、EUの力を強化するものとなるだろう」と訴えた。
各団体は、緊急支援を必要とするすべての被害者への賠償金支給に資金を充てるよう求めている。これにはウクライナ侵攻に関連する性暴力被害者への支援や行方不明者の家族の名誉回復と補償、拷問をはじめとする重大な人権侵害被害者の社会復帰支援などが含まれる。これらの団体は、加害者の資産を被害者への損害賠償に充てる司法制度を欧州が先駆けて確立する歴史的機会だと強調した。
ウクライナ侵攻を開始してからの3年間、プーチン大統領が3000億ユーロもの国有資産を失うリスクにこれほど近づいたことはなかった。同大統領が瀬戸際に立っている今、ウクライナ侵攻を終結させるためにロシアが和平交渉の席に着くことが期待される。


