英国、フランス、ドイツの首脳は10日、凍結されたロシアの国有資産をウクライナ軍への財政支援に活用することで合意した。三カ国は共同声明で、ロシア軍のウクライナに対する攻撃の激化と同国の社会基盤の標的化を非難した。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナとの和平交渉を引き延ばし続ける中、三カ国はロシアへの圧力を強めると宣言した。凍結資産の活用は、ロシアが最終的に和平交渉の席に着くことを促すための圧力手段の1つとなることを意図している。三カ国の合意は、ウクライナ侵攻における重要な転換点だ。西側諸国はついに和平交渉を巡るプーチン大統領の空虚な約束を見抜いたことになる。
凍結資産の規模が大きいことから、プーチン大統領にとっては大きな賭けとなる。昨年2月時点で、欧州連合(EU)と主要7カ国(G7)によって凍結されたロシアの国有資産の総額は約2600億ユーロ(約46兆円)と推定され、全世界で凍結された同国の資産の価値は3000億ユーロ(約53兆円)近くに上る。うち、EUで凍結された同国の資産の額は推定で2100億ユーロ(約37兆円)に上り、英国は270億ポンド(約5兆円)を超えるロシア資産を凍結した。これまでのところ、資産から生じた利益と利息のみがウクライナ支援に充てられており、元本には手が付けられていない。
欧州の首脳は先週、デンマークの首都コペンハーゲンで会合を開き、凍結されたロシア資産1400億ユーロ(約25兆円)をウクライナへの融資に充てる可能性を協議した。この提案は大きな支持を得ており、今月23~24日にかけて開催される欧州理事会会合で引き続き議論される予定だ。
だが、懸念は残っている。国際法上、主権国家の資産は没収できないからだ。国有資産が凍結された場合、ロシアはその資産を利用できなくなるが、所有権は保持したままとなる。他方で、同国は国際法に従い、侵略戦争によって生じた損害に対する賠償を行わなければならない。これを基に、凍結から押収への移行が議論されているのだ。ロシアの侵略戦争によって生じた損害額は、既に凍結資産の額を大幅に上回っている。



