この男性は興味深い経歴を持っていた。64歳の失業中のエンジニアで、カリフォルニア州立ポリテクニック大学で過去に物理を学んでおり、文末のピリオドのあとにスペースを2つ空ける癖があり、彼の妻の証言によれば、米国式と英国式の両方のつづりを使うという。
疎遠になっていた彼の兄弟はグッドマンに対して、ドリアンは「クソ野郎」だと言い、彼は政府の機密プロジェクトに関わっていたが「あいつの人生にはしばらくの間、何してたのかわからない空白期間があるんだ……全部否定するだろうけどな」と語った。さらに、ドリアンは前立腺がんや脳卒中などの健康上の問題を抱えており、これはビットコインプロジェクトからサトシが姿を消した状況とも符合する。
ドリアンにメールで接触に成功
2月初旬、グッドマンはドリアンが以前に注文していた鉄道模型の会社から彼のメールアドレスを入手し、趣味について尋ねるメールを送った。ドリアンによれば、彼は10代の頃から鉄道模型が好きで、「手動旋盤やフライス盤、平面研削盤」を使って自分で部品を作るという。経歴に関する質問をすると、グッドマンいわく「言葉を濁す」ような反応を示し、さらにビットコインのことを聞き始めた途端、まったく返事をしなくなったという。ドリアンの息子エリックは、父はビットコインについて絶対に話さないだろうとグッドマンに告げた。
そこでグッドマンは、ロサンゼルス北東のテンプルシティにあるドリアンの家を訪ねた。ドリアンは6人の子供を持つ父親で、妻とは別居中、93歳の母親と暮らしていた。彼は窓からのぞいただけでドアを開けず、ほどなく地元の保安局から巡査が2人やってきた。ドリアンが「知らない女が1時間もドアを叩き、玄関に座り込んでいる」と通報したのだ。
グッドマンが警官に事情を説明すると、ドリアンはジーンズにTシャツ、靴を履かずにジム用ソックスだけという恰好で家から出てきた。そして車道の端のグッドマンが立っている場所まで来ると、彼は短く質問に答えたという。グッドマンによれば、ドリアンはうるさそうに手を振りながら「私はもう関わっていないし、話すこともできない。あとは他の人に任せてある。今は彼らが管理していて、自分には何の関係もない」と一蹴したそうだ。そしてドリアンは家に戻り、グッドマンは彼の言葉が自分のスクープを裏付けたと思ってその場を立ち去った。
ビットコイナーたちはこの記事に激怒した。疎遠になっている家族にインタビューし、ドリアンの自宅と車の写真が、家の番地やナンバープレートが読み取れる状態で掲載されている。ギャビン・アンドリーセンは(彼の指揮のもと、ビットコイン開発者たちはナカモトが書いたオリジナルのコードの3分の2をすでに書き換えていた)、「ニューズウィーク誌がナカモト一家をさらしたことに失望し、以前リアの取材を受けたことを後悔している」とツイートした。しかし、この種の反発が起きるのは想定内だったかもしれない。
ライアンがドリアンの住所を調べてみると、AP通信の支局から車で数マイルしか離れていないことがわかった。彼は上司に、そこまで行ってインタビューを試みたいと申し出た。テンプルシティは、パサデナの南東にあるアジア系住民の多い地域で、「美味しい餃子を探すならあの辺に行く」という感じの場所だとライアンは後に語っている。


